都市ガス保安の技術をつなげ 東京ガスネットワークが競技会で切磋琢磨
東京ガスの導管部門を分社化した「東京ガスネットワーク」が、保安技術を競う大会を毎年、横浜で開いている。設備や機器の改良に伴ってガス事故の発生が減り、〝実戦経験〟が少なくなる中でスキルや士気の向上を図るためだ。 10月8日、横浜市鶴見区の臨海部にある同社の研修センター。訓練用に建てられたアパートで、ガス漏れ通報があったと想定する初動対応の競技が行われた。 「どのあたりで匂いを感じますか？」 「屋内配管の圧力確認、室内での漏洩なし！」 ヘルメットをかぶった2人組の保安要員が、長い棒の先に取り付けた検知器を部屋のあちこちで動かし、漏れている箇所の特定と修理を急ぐ。必要に応じて他の部屋の住人を避難誘導したり、応援チームの出動要請や消防への通報も。一連の作業の素早さや判断の正確さが評価される。 「全社を挙げている」という同大会には、若手・中堅社員ら約150人が10競技に出場。参加者の一人は「『何事もない日常』を守るのが私たちの使命」と、表情を引き締めた。 日本ガス協会によると、50年前には都市ガスの事故で年間100人を超える死者が出ていた。しかし、ガス漏れを検知して自動で遮断するマイコンメーターの普及や、腐食に強く地震でも割れにくいポリエチレン導管への置き換えが進んだことなどから、近年は死者ゼロから一ケタ台に抑えられている。 事故は少なくなったが、対処技術は確実に継承する必要がある。社員が互いのスキルを見て、切磋琢磨していく機運も高めていくため、競技大会の形で取り組んでいるのだという。 沢田聡社長は「地震などの自然災害が相次ぐ中、ライフラインの安定維持や、早期復旧を担う使命の重さを感じている」と語る。少子化に伴う「担い手不足」も念頭に、少ない人手でトラブルに対応できる工夫も進めるといい「AI（人工知能）などのデジタル技術を活用しながら、現場の知恵を生かしていきたい」と力を込める。（山沢義徳） ▼東京ガスネットワーク 電力小売りの自由化に伴い行われた「発送電分離」と同様に、ガス自由化に伴って東京ガスの導管部門を分社化し、令和3年に設立された。東京ガスの完全子会社で、従業員数約3800人。供給区域は東京都および神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬各県の主要都市。
