いじめ認定、判断しやすくなる? 学校に弁護士「スクールロイヤー」制度、保護者に期待と懸念
学校で起きる問題に弁護士が法的に助言する「スクールロイヤー」(SL)制度。子どもの権利擁護や教職員の働き方改革の一環で、導入が進んでいる。長野県内では、先行する長野市と松本市の両教育委員会に加え、県教委も4月に制度化。他にも導入を予定する自治体がある。実際にはどういった相談が寄せられているのか。 「保護者も学校も目指すところは同じはず」と話す六川弁護士
長野市教委のSLを務める六川祐介弁護士(長野市)によると、相談は小学校からが多い。「いじめの加害者を同じ教室に入れないでほしい、という被害児童の保護者の要望にどう対応したらよいか」との相談には「被害児童の心身の状態を優先しつつ、いじめの内容や加害児童の学習権の保障を踏まえて判断するのが望ましい」と助言した。
「中学校教員が元教え子の高校生の携帯電話に、選挙で特定政党への投票を依頼するメッセージを送った。どのような問題があるか」との相談には、「職務における政治的中立性や生徒連絡先の目的外利用の観点で懲戒に該当し得る」と解説。生徒や教職員の交流サイト(SNS)利用に関する相談も目立つという。
保護者にはいじめの基準などを巡り「法的な根拠が明確になる」との期待がある一方、実際に弁護士と相談できるのは学校側で、「存在が見えにくい」との声も聞かれる。
高校1年と中学2年の娘を持つ長野市の父親(49)は「いじめの認定などで判断しやすくなるのではないか」とみるが、保護者の要望や批判に対して弁護士が学校を一方的に守り、公平性を欠く印象を与えれば「溝を深めかねない」と懸念する。県教委義務教育課は「学校が子どもや保護者との対話を大切にする姿勢は変わらない」と強調する。
2016年には児童相談所への弁護士配置が義務づけられた。子どもの権利や教育現場に理解のある弁護士の育成が求められており、県弁護士会は県教委の制度導入を機に研修会の開催などスキルアップにも積極的に取り組む方針だ。六川弁護士は「保護者も学校も目指すところは同じはず。複雑化する学校内での問題に共に頭を悩ませながら向き合っていきたい」としている。(小泉朋大)