ブラックコメディのエッセンスも…ドラマ『3000万』制作陣が語る「現実世界と地続きの世界観」
視聴者の心を激しく揺さぶっている秋ドラマ『3000万』(NHK系、土曜22時~)。経済的に苦しい生活を送っている佐々木祐子(安達祐実)が3000万円をある日手に入れたことをきっかけに人生が激変する様子を描いたクライムサスペンスである。スリリングなストーリー展開に加え、重厚感あふれる作中の雰囲気が特徴的な本作。映画のような質感の連続ドラマになっているが、どのように本作は制作されているのだろうか。本作の演出を務める保坂慶太氏と小林直毅氏に話を聞く。 【写真】夫婦役の安達祐実と青木崇高の掛け合いも見事な『3000万』【4点】 まず保坂氏は「現実世界の地続きの世界観になることを目指しました」と本作の制作において重視したポイントを口にして、具体的に意識したことを説明してくれた。 「例えば、“闇バイト”がドラマなどで扱われる場合、どうしてもバックにいる人間は半グレやヤクザで、 “記号的な描かれ方”をされやすい。本作では脚本に限らず全てにおいて『記号は安易に使用しない』と決め、実行犯の長田(萩原護)や蒲池(加治将樹)、指示役の坂本(木原勝利)といった登場人物をステレオタイプにはめないように意識しました。基本的にどのキャラクターも二面性を持たせるように作っています」 記号的に描かれたキャラはどうしても“作り物感”が出る。そうならないようにこだわったおかげで、長田や坂本だけではなく、さまざまな登場人物に「こういう人いそう」と視聴者に思わせることができるのだろう。また、「説明しすぎないこと」も心がけたという。 「登場人物のバックボーンや人となりを時間をかけて説明するドラマは多いと思います。ただ、本作は『想像しながら楽しんでほしい』という狙いがあります。加えて、『初速でいかに視聴者を巻き込んでいけるか』ということも大切にしていて、3000万円を手に入れる前の佐々木家の様子をはじめ、登場人物の関係性や現状の説明をすることだけが目的のシーンは極力省いて物語をスタートさせました。物語を凝縮する上でも、説明をどれだけ省略できるかは大事なポイントでした。」 スピード感ある展開は“説明しすぎない ”からこそ表現できているようだ。過去や性格をついつい考えたくなる登場人物の描き方ができており、むしろ説明が少ないからこそ想像力を膨らませながらストーリーを追えるのだろう。