野心あふれる「起業家」イメージいまや昔? 高齢化、パートタイム、副業の延長...さまざまなタイプが誕生、実はラッシュ状態
パソコン1台と自宅があれば、誰でも起業できる
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめた帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。 ――起業家といえば、堀江貴文さんや前澤友作さん、三木谷浩史さんらが20代から30代にかけて次々に会社を興したように、「若い挑戦者」というイメージがあります。 それが最近、30代、40代の起業家の割合が減って、50代、60代のミドル&シニア層の起業家の割合が増えているのはどういうわけでしょうか。 飯島大介さん 起業に対する心理的なハードルが大きく下がったことが大きいと思います。かつては、よほどの覚悟が必要な、人生を掛けた一大事だったでしょう。 最近は、いろいろなタイプの人が起業できるようになりました。ホリエモンさんや前澤さんのように、スタートアップ企業を目指すという気負いや野心がなくても、定年退職後にキャリアを生かしたいシニアの方、ドロップアウトした人、会社が気に食わなくて早めに辞めた人。みんな抵抗感なく、気軽に起業できます。 ――日本政策金融公庫の「起業意識に関する調査」をみると、起業にお金がかからないことに驚いています。 調査では、自分の会社の経営に専念する「起業家」と、副業などのつもりの「パートタイム起業家」に分けていますが、「起業家」でも起業費用はゼロの人が3割。50万円未満が3割です。「パートタイム起業家」では、費用ゼロが半数以上、50万円未満が4割で、50万円以上かかった人は1割もいません。 飯島大介さん 今は、パソコン1台と、事務所になる自宅があれば、誰でも起業できますからね。ただし、それで年商1000万円以上稼げるようになるかどうかとなると、別問題です。 インボイス制度も始まったことし、フリーランスの人が税金対策で会社組織にしたほうが得だと思えば、それも起業になります。
起業が簡単になったのは、日本経済にプラス?マイナス?
――日本政策金融公庫の調査の面白いところは、近年、あまりにもいろいろなタイプの起業家が登場し、自分を「経営者」と自覚すらしていない「意識せざる起業家」までいるため、週に35時間以上事業に充てる人を「起業家」、それ以下を「パートタイム起業家」に分類していることです。 飯島大介さん その定義には少し疑問が残りますが、仮に週に20時間「パートタイム起業」の事業に充てるとすると、週5日勤務として1日に4時間です。出勤前に2時間、帰宅後に2時間。十分、「パートタイム起業活動」を続けることができる計算です。 ――これだけ、起業が簡単になり、起業家の数が増える一方、野心あふれる若い世代の割合が減ったことは、日本経済にとってはいいことなのか、よくないことなのか、どちらでしょうか。 飯島大介さん かつてのホンダやソニーのような日本経済を牽引する新しい大きな企業が出てくるかどうかですが、まず、起業家の数を増やして新規企業の分母を大きくする必要があります。 その意味では、若い人の割合が減ったとはいえ、起業家の数が増えることはいいことです。日本経済再生の第一歩を踏み出したと思います。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)