「それって、野球はできますよね?」名門ボーイズ選手を襲った“骨肉腫”という病…慶大&関大の野球部主将が振り返る「チームメイトとの物語」
奈良県にある中学硬式野球チーム・生駒ボーイズ。例年全国大会で上位を争い、多くのプロ野球選手も輩出する名門である。2005年に創設されたチームの13期生はいま、大学4年生になっている。各々強豪大学で野球を続けるメンバーたちだが、実は彼らが中学生だったころ、チームではちょっとした「事件」が起きた。それは、あるメンバーに重篤な病気が発覚したこと。彼らはいかにしてその困難を受け止め、また今に活かしているのか。当時のメンバーたちに話を聞いた。<全3回の1回目/つづきを読む> 【写真】「令和の時代でも…ロン毛はひとりもいない!」奈良の強豪・生駒ボーイズの練習風景…慶大主将&関大主将も輩出&病を克服して学生コーチのメンバーも…「黄金世代」だった13期の選手たちの活躍も見る 642メートルの生駒山は大阪府と奈良県境にある。山頂に立つテレビ塔は大阪市内からでも確認できるシンボルで、神社があったり遊園地もあって、府民・県民に親しまれている山だ。 生駒山を含む生駒山地の北側に大阪と奈良を往来するための阪奈道路がある。かなりの勾配があって、大きなカーブもある幹線だ。この道路からわき道を入っていくと、中学硬式野球チーム・生駒ボーイズのグラウンドがある。 今年の春の大田スタジアムで行われた54回日本少年野球春季全国大会で準優勝を果たした。夏の日本少年野球選手権大会に過去9回出場し、1回の優勝を遂げている名門チームである。今年も予選を勝ち抜き、10回目の出場を決めている。 2005年創立、今年の4月に22期生を迎え入れている。他に何十年と歴史を重ねるチームもあるし、もっと新しいチームもあって、歴史としては中堅といったところか。各学年多くても20人前後だから強豪の割には少ない人数だ。
名門ボーイズに起こった「ある出来事」
このチームの13期生、音野峻也(たかや)は今、東北福祉大4年生。 学生コーチとしてシートノックを打ち、バッティングピッチャーもする。時には主将や監督と話し合って試合のメンバーを決めたり、総括的に管理する役目を担う。 今から9年前、音野は中学1年生、チームに入団したばかりの5月、右膝に違和感を覚えた。 骨肉腫とは比較的よく耳にする病名だが、10代の思春期に膝や肩の周りに発症し、症例数で言えば年間200から300症例に過ぎない病気だ。わかり易くいうと骨のガンである。 「最初は筋肉痛かなと思ったんです。運動はできた。そのうち治るだろうと。ある日、急に夜、肉離れみたいになって走れなくなって。次の日、朝起きようと思ったら、立ち上がれなかった」 生駒ボーイズにはメディカルチェックがあって、その前後毎日、足が痛いと書いていたという。 音野と同期、生駒ボーイズ13期の主将は藤原太郎。2024年度は関西大のキャプテンを務める。藤原が入団当時を振り返る。 「峻也は当時、ピッチャーでした。テンポが良くて守り易かった。入団してすぐの13期の最初の試合の勝ち投手は峻也だったんです」 そこから間もなく、とんでもない病気が見つかることになる。 音野の父・淳一は息子が練習の捕食の弁当を残してくることが気になっていた。 「嫁はんが、弁当を食べて帰ってけぇへんというんです。それと足が痛いって。自主練習でボールが当たったことがあって、それでかなと。近所の町家の病院で診てもらったら、『こけたら骨が折れるよ。大きな病院を紹介しますから、とにかく行ってください』って」 国立医療センターにいって患部組織を取って精密検査の結果をまった。2週間後、入院の準備をして来てください、と連絡があった。夫婦二人で医師と対面した。担当医は唐突に告げた。 「右膝から大腿骨の骨肉腫です」
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