放射性医薬品による診断から開発を一元化 藤田医科大に国内初の施設
高度ながん治療をめざして、放射性医薬品による診断、治療、開発までができる施設「セラノスティクスセンター」が、藤田医科大学病院(愛知県豊明市)に完成し、5月から本格稼働した。院内で放射性医薬品の製造ができ、検査や治療の数を増やし、がん治療の向上が期待できるという。 【写真】薬用の放射性物質をつくることができる「サイクロトロン」=2024年4月30日午前11時37分、愛知県豊明市の藤田医科大学病院、松永佳伸撮影 診断と治療ができる「セラノスティクスエリア」のほか、放射性医薬品を作るための「サイクロトロン(粒子加速器)」や合成装置が、一つに集約された施設は国内初という。 センターは地上1階、地下1階で、延べ床面積約450平方メートル。放射性同位元素の核種をつくるサイクロトロンと合成装置で、PET(陽電子放射断層撮影)の検査に必要な放射性医薬品を製造する。治療核種専用の投与室、高度な排気・排水処理システムなども備える。 病院では、これまで半減期の短い検査薬を海外から購入していたため、1日に検査できる件数が限られていた。だが今後は、院内で製造した放射性医薬品を、診断と治療ができるセラノスティクスエリアで患者への投与が可能となる。 同病院放射線科の乾好貴准教授は「より多くの患者へ診断、治療を提供でき、コスト削減にもつながる」と話す。 放射性医薬品を体内に投与して臓器の診断や治療をする核医学は、がん治療に重要な役割を果たしているとされる。 体内に投与した放射性医薬品は特定の臓器や組織に集まる性質があり、がんやアルツハイマー病などの病巣に集積させ、そこから放出される放射線を映像化したり、放射線でがん細胞を死滅させたりすることができるという。 センターの設置で、多種の放射線医薬品を扱うことができ、前立腺がんなど適応できる病気も増える。 同病院の山口博司教授は「全身に散らばった小さながん細胞を特定でき、深部のがんや難治性がんの治療などにも効果が見込める」と期待する。(松永佳伸)
朝日新聞社