英EU離脱はドイツ経済にとってプラスか? 存在感増すフランクフルト
住宅価格が上昇、不動産バブルの兆し
将来的には減速モードに入るとの見方が強いものの、ドイツ経済は数字上では今も好調を維持している。欧州委員会で様々な分野の統計を担当するユーロスタットが発表した資料によると、今年7月のドイツ国内の失業率は3.7パーセント。同時期のフランスとイタリアでは、それぞれ9.8パーセントと11.3パーセントという数字であった。多くの国では選挙で雇用問題が争点となるケースが少なくないが、ドイツ統一後では最も低い失業率が続いているため、今月ドイツで行われる総選挙でも雇用が有権者の関心事の中で上位にランクインすることはなさそうだ。 景気が安定するドイツで活況を見せているのが、国内の住宅市場だ。ドイツ銀行が先ごろ発表した調査結果によると、過去7年間でドイツ国内の主要都市の住宅価格は約60パーセント上昇している。 ドイツはヨーロッパの中でも、持ち家の比率が非常に低い国で、ローンを支払っている人を含めても、自分自身の家を所有するのは約50パーセントにすぎない。ベルギーやイタリア、スペインといった国では、持ち家の比率が7割近くにまで上昇し、イギリスやフランスでも6割を超えている(ユーロスタット調べ)。 住宅価格が上昇したのは、好調な景気と将来に対する不安が重なって、多くのドイツ人がこの数年で固定資産としての住宅の購入に動き出したのだ。ドイツの主要都市は、これまで他のヨーロッパの大都市と比べても住宅価格や賃料が安いことで知られていたが、もはやそれも過去の話となりつつある。加えて、住宅価格の高騰によって、ドイツ国内の経済格差がさらに大きくなるのではという懸念も生まれている。 ドイツ各地では、戸建からタワーマンションまで、さまざまなタイプの住宅が急ピッチで建てられているが、まだ需要が供給に追いついていない状態なのだという。住宅ローンの金利が低いこともあり、多くのドイツ人や外国人投資家が住宅の購入を開始。ベルリン西部の住宅街では、過去数年で販売価格が2.5倍に上昇した物件もあった。住宅バブルに発展する可能性を懸念したドイツ連邦銀行は今年5月、「住宅価格は割高になっている」と警鐘を鳴らしたが、このブームはしばらく終わりそうにもない。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト