名城大が追随許さず6連覇!指揮官と主将にも涙「絶対に勝つんだ」思い込めた継走/富士山女子駅伝
◇2023全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝、2023年12月30日/静岡・富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場:7区間43.4km) 富士山女子駅伝の総合成績&区間賞をチェック! 2大大学女子駅伝の一つ、富士山女子駅伝が行われ名城大が2時間22分42秒で6連覇を達成した。 女王・名城大が圧巻の強さを披露した。1区の柳樂あずみ(2年)が「今年も最低でも区間賞をとると決めていた」の思いを実現して区間賞スタートを切ると、そこから米澤奈々香(2年)、山田未唯(1年)、石松愛朱加(2年)と4連続区間賞。米澤は「去年はケガをしていましたが、今年は勢いをつけたかった」と離す。 続く最長区間の5区は谷本七星(3年)が区間2位。「今年は日本代表になれず悔しい思いがありました」。個人の悔しさを晴らす舞台は自ら手を上げたエース区間。志願したら、米田勝朗監督は「立派な走りをしてくれた」と評価。大東大のサラ・ワンジル(1年)に次ぐ力走で後続に影を踏ませない。 6区を務めたのは主将の増渕祐香(4年)が「優勝を決定づける走り」(米田監督)。全日本大学女子駅伝で補欠となり「そこからどう上がっていけばいいか悩んだこともありました」。それでも「駅伝の悔しさは駅伝で晴らすしかない」。自らの区間記録を塗り替える快走だった。 アンカーの原田紗希(2年)はフィニッシュ時は笑顔も、少し時間をおいて涙。「連覇を途切れさせたらどうしようと不安もありました」と吐露するが、「後続と2分近く差があったので、伸び伸びと走ることができました。最高の気持ちです」仲間に感謝しつつ、区間5位に「思うような走りができなかった。1区から6区までの選手のお陰です」と言う。。 「この1年は個人としても、チームとしても苦しい時期がありました」(増渕) 米田監督は声を震わせ、「10月の仙台(全日本大学女子駅伝)で主将を外すというオーダーを組んだ。増渕には悔しい思いをさせたと思います」。ただ、後輩たちは「主将を優勝させて卒業させたいと思った走りだった」と称える。その言葉を受けて、主将の目にも涙が浮かぶ。 傍目で見れば隙なし、完全無欠。だが、強力世代が抜けていくなか、「今年は弱いと言われていた」。夏には「学生たちの状態が上がらず厳しいと思った」。勝つことのプレッシャー、そして、勝ち続けることの難しさ、そして、ちょっとした気の緩み。「アスリートとして自分で自分の身体を作ることが大事」。その当たり前のことができない部分もあった。 「チーム全体に甘さがありました。それなら、負けたほうがいいのではないか」。指揮官の言葉に、選手たちのスイッチが入った。そこからはしっかりチーム力が上がった。 増渕は言う。「これまでは絶対的なエースがいました。私がその立場にならないといけなかった。後輩たちに不安な思いをさせてしまった。でも、全員が良い練習ができていて、総合力では絶対に負けない」。チームが団結した。 前評判では、もしかして…という声もあった。それでも、「それを跳ね返して絶対に勝つんだというのが走りに出ていました」と米田監督。7人、いや、補欠やエントリー外も含めて、思いがタスキに宿った。 「今年以上にプレッシャーなど、いろんな思いがあると思いますが、6連覇達成したことに自信を持って。抜けるのは私1人。優勝できると思うので、しっかり個々の力を高めていってほしいです」 主将の増渕は、そう誇らしそうに後輩たちを見つめた。苦楽をともにした仲間たちと過ごした1年を締めくくる1日。富士山の麓には、女王たちの笑顔と涙があふれていた。
月陸編集部