これまでにないほどの政治不信の中、通常国会の論戦が始まった。この国会で政治改革の実現に道筋がつけられるかどうかが、国民の信頼回復の一歩となるだろう。派閥の裏金事件への対応を求められる自民党ばかりでなく、野党を含めた国会全体がこの危機に真摯［しんし］に向き合ってほしい。 　岸田文雄首相は３０日の施政方針演説で、自民党派閥の裏金事件について「国民から疑念の目が注がれる事態を招いたことは極めて遺憾で、心からおわび申し上げる」と陳謝した。政治の信頼回復に向け、党の政治刷新本部が策定した改革を先頭に立って必ず実現するとの決意を示した。 　ただ、政治刷新本部の中間取りまとめは、本気度に疑念がある。政治資金規正法の改正は掲げたものの、事前の構想にあったとされる「党幹部の派閥離脱」「派閥事務所の閉鎖」は党内事情で削除された。金と人事の集団ともいえる「派閥」に対する「政策集団」の言葉は残した。 　政治資金の流れの透明化は改革に欠かせない。立憲民主党は政治資金パーティーの全面禁止や、国会議員に会計責任者と連帯責任を負わせる連座制の導入に前向きだ。連立与党の公明党も連座制の導入や政策活動費の使途公開義務付けなどの改革案を打ち出している。２９日の集中審議で岸田首相は連座制への理解の姿勢を示したものの、改革の具体策には触れなかった。

　裏金の使途などの実態を明らかにすることが、改革議論のスタートとなるはずだ。集中審議で岸田首相は党内での対象者への聞き取りに加え、第三者による調査に言及した。施政方針演説でも「政治改革に終わりはなく、今後も政治刷新本部においてさらなる改革努力を継続していく」と述べた。有言実行のリーダーシップが発揮できるか。厳しい目でチェックし続けなければならない。 　国内外の課題は山積している。元日に発生した能登半島地震の復旧・復興や被災者支援など緊急性のある対応に万全を期してほしい。通常国会は総額約１１２兆円の歳出となる新年度予算案も徹底した議論が必要だ。演説で岸田首相は福島の復興について「政権の最重要課題」との認識を示した。道半ばの復興にどう取り組むのかも、県民は注目している。（安斎康史）