「I Love Russia」~毒殺されかけた彼女が今、伝えたいこと【ロンドン子連れ支局長つれづれ日記】
■“コロナの後遺症”から一転…「毒を盛られたのでは」
10日後、ようやく病院にかかると、医師の診断は「コロナの後遺症」「自己免疫疾患」「腎不全」など、めまぐるしく変わった。そして―― 「12月も終わろうとしていた頃、私の主治医が、『毒を盛られたのではないか。警察に相談する必要がある』と言ってきたのです」 「警察は、私の体とアパートに放射性物質がないか調べました。陰性でした。警察は私にとても腹を立てていました。私はロシア人ジャーナリストであり、ロシアの独立系メディアの記者であり、調査報道に携わっているのだから、毒を盛られたのではないかと考えるべきだったと言っていました。『最初にその可能性を考えるべきだった。電車で気分が悪くなった時に警察を呼ぶべきだった』と」 当時のエレーナさんは“ヨーロッパは安全だ”と考えていたという。 「警察は私に『その考えは全く浅はかだ。ここベルリンやドイツでは“政治的な殺人”が行われており、ロシアの特殊機関が非常に活発に活動している』と言いました」 当局による捜査は、現在も続けられている。
■ロシアに“選挙”はない
ロシアの大統領選について聞くと、エレーナさんは小さく笑って言った。 「ああ、ロシアに“選挙”はないですよ。もうすぐ起こるアレは、選挙ではありません」 「ロシアには、こんな言葉があります。『誰に投票するかは問題ではない、誰が数えるかが問題なのだ』。プーチン政権のペスコフ報道官はすでに『プーチンは90%以上を獲得するだろう』と言いました。つまり、それが“彼らが望む数字”であり、“彼らが得る数字”でもあります」 「でも、多くのロシア人にとって、選挙と呼ばれるものはやはり重要です。なぜなら1人1人の声は届かなくても、何かを起こす方法ではあるからです。戦争に反対するためにできる何かなのです。人々は戦争に反対するために投票に行きたかった…だから『戦争に反対だ』と言っている人が候補になることが、とても重要だったんです」