【国立大学費150万円にすべき?】東大生の親の4割は年収1000万円超、給付型奨学金とセットで交付金見直しを
■ 国立大の学費、年150万円は妥当 後藤:緊張感を持たせるためにも、現在のように、すべての国立大学に交付金を配分するという仕組みを見直すべきです。特に研究費に関しては、オークション制のように、大学の研究者に個別に手渡すというシステムを採用する考えも合理的でしょう。 学費に関しては、伊藤委員が提言しているとおりの額が妥当ではないでしょうか。実際、東大生の親の4割以上が世帯収入1000万円を超えているとされます。学費を払える層はお金を払うべきなのです。それが、ノブレス・オブリージュというものでしょう。 一方、伊藤委員自身が発言していますが、交付金の見直しは給付型奨学金の充実とセットで進めるしかありません。「親ガチャ」という言葉が定着したように、現実には親の世帯年収や地域によって受けられる教育の質が決まってしまっています。 大学入学共通テストの無償化含め、教育機会の平等を実現させる施策はドンドン打たないといけません。 さらに言えば、そもそも入学準備にお金がかかりすぎます。大学受験には1校当たり、交通費を含めれば4万円近くかかります。こうしたことから、学校推薦型選抜で受験校数を減らすことも受験生は考えています。 そう考えると、落ちても大丈夫なように保険のようにいくつもの大学を受験する一般選抜は不合理ですね。どんどん一般選抜から学校推薦型、総合型選抜に受験生がシフトするのもうなずけます。そして、受験料などの入学準備にお金がかかるのですから、機会の平等を考えれば、塾の授業料にかかる費用なども考慮し、入学前から奨学金を給付すべきです。
■ 京大教授も「勘弁してほしい」 ──物価も上がり、雇用も不安定な中、世帯年収1000万円を超える世帯に「150万円払って」とお願いすれば、反発もあると思います。 後藤:給付型奨学金をもっと幅広く支給すればいいだけの話です。例えば、世帯年収1000万円の層には20万円、300万円以下には100万円、といったふうに所得に応じて給付金額を決めるべきでしょう。なんでも一律がいいわけではありません。 国立大学の学費が低いことそのものだけが問題なのではなく、交付金の使い方にも問題があるのです。 全国に国立大学は86校あります。子どもの数が減り続けていく中、現在の交付金や研究費の配分の仕方を継続していると、さらに国立大の既得権益化が進み、私立大学との競争環境がいびつになっていきます。少子化が急速に加速する今こそ、議論を進めるべきなのです。 実際、特に東京大学と京都大学は、表立っては発言していませんが、今のように交付金をすべての国立大に配る仕組みを嫌がっている節もあります。 私自身、国立大学協会の会長を務めた人から、「交付金は国立大間で差をつけられない仕組みになっている。(淘汰されるべき)レベルの低い大学に合わせて金額を決められるのは勘弁してほしい」という本音を聞いたこともあります。 地方振興を目的に全国津々浦々に置かれた教員養成系の大学も、学位を共同で付与するなどして統廃合を図るべきです。 ──そこも高等教育のアクセスの問題になりますが、地方在住の子どもが損をする仕組みになりませんか。