日本でなぜ医療逼迫した? 尾身茂さん指摘 新たな感染症「減ることはない」
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長を務めた結核予防会(東京)理事長の尾身茂さん(74)が12日、「人類の感染症との闘い」と題して松本市で講演した。世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局でポリオ(小児まひ)の根絶へ指揮を執った経験を紹介し、新たな感染症との向き合い方も語った。 【写真】コロナ対応を振り返る尾身茂・結核予防会理事長
講演は、県内52のロータリークラブでつくる「国際ロータリー第2600地区」の大会の一環。尾身さんは、同事務局でポリオ根絶に取り組み始めた1990年代は「ほとんどの発展途上国はポリオだらけだった」と説明した。予防接種に加え、ポリオなどが引き起こす急性弛緩(しかん)性まひの患者情報を集約するシステムを構築して対策に当たった。
ポリオは今なおパキスタンやアフガニスタンを中心に残っている。尾身さんは、根絶に向けて率先して支援活動を始めた国際ロータリーに「この場を借りてお礼を申し上げます」とし、今後の支援、協力にも理解を求めた。
また、グローバル化により新たな感染症は「増えることがあっても減ることはない」と強調。日本で新型コロナの感染拡大初期に医療が逼迫(ひっぱく)した背景には医療情報のデジタル化の遅れがあると指摘し、「なぜこうしたことが起きたのか本質的な議論をしない限り、同じ間違いを起こす可能性は否定できない」とした。