死んだ夫にまさかの隠し子…遺産要求されたが法廷相続分の半分で済んだワケ
● 前妻との間の子どもにも 配慮した遺言をのこそう 「まさかうちの旦那に限って」――そう思っているあなたにも、こうした事態が起こるかもしれません。私は年間100件以上の相続に関わっていますが、この事例のようなことが時々あり、2年に1件くらいは、「相続人の誰も知らない血のつながった兄弟が出てきた」というケースに直面します。 この事例では、公正証書遺言がありましたから、遺留分である8分の1を請求されるだけですみました。遺言書がなければ、法定相続分である4分の1を渡さなければならなかった可能性が高かったでしょう。 突然、前妻の子どもが登場して、空子がかわいそうだと思うかもしれません。しかし、空子が怨子や陰男の存在にまったく気づいていなかったということは、捨男は養育費をきちんと支払っていなかった可能性があります。前妻とその子どもは離婚後、苦労したのかもしれません。 そもそも、陰男には法的に保障された遺留分があるのですから、遺産相続を主張するのは当たり前で、相続の際に1円ももらえないとなれば、争いになるのは当然だと思ったほうがいいでしょう。捨男は遺言で、前妻との子どもの存在に触れて、遺留分に配慮した財産分与をすべきだったといえます。 実は、遺言で子どもを認知するという裏ワザがあります。これは「死後認知」と呼ばれるものです。たとえば次のようなケースがあります。 Aさんは生前、妻と子どもたちに「俺の愛する家族はお前たちだけだぞ」とたびたび言っていました。そして妻と子どもたちもAさんのことを愛しており、Aさんは最期を看取ってもらったのです。
しかし実は、Aさんには、愛人との間に子どもがいました。Aさんは愛人には、「今は立場もあるから認知できないけど、ちゃんと財産を残すようにしておくから安心してほしい」と伝えていました。 Aさんはその言葉どおり、遺言の中で愛人の子どもを認知しました。死後であれ認知が認められれば、愛人の子どもも法定相続人になります。 残された家族にとっては寝耳に水で裏切られたと感じるかもしれませんが、愛人の子どもは実の父親から認知されなければ、何も相続できません。死後認知は、婚外子の保護を目的とした制度であり、婚外子にとっては最後の救いという意味合いがあるのです。 ● 「俺だけなんてもらえないよ」 兄弟姉妹合意で遺言書を破棄 夫を亡くしたヨネは田舎の自宅で一人暮らししていましたが、85歳になってさすがに戸建てでの一人暮らしが大変になってきました。そこで、ヨネの子どもたち4人で相談したところ、自宅を売却してヨネを高齢者住宅に入居させることに。兄弟姉妹4人は全員、都会に出てそれぞれ家庭を持っています。 ヨネが89歳で亡くなると、遺言を残していることがわかりました。そこには「一切の財産を長男の等に相続させる」と記されていたのです。ヨネが残した財産は預貯金2000万円でした。等は妻に相談しました。 「俺だけ全部もらうわけにもいかないよな。俺が2000万円全部もらったら、兄弟仲、悪くなるよな。もう子どもも独立しているし、山分けでいいよな」 等は大手企業に勤めているので、お金には困っていません。 「そうね。兄弟みんなで分けたほうがいいわよ。1人500万円でいいんじゃないの?」