16歳学生が“動物保護と気候変動”を知る旅 世界の現状を目の当たりにするドキュメンタリー
16歳のベラとヴィプランは動物保護と気候変動問題に関心を持ち、活動している学生だ。彼らは世界の現状を知る旅に出る。インドの海岸でプラスチックごみを拾い、フランスで畜産の現実を知り、ケニアで野生動物と出合う。未来のためにできることは? 2人の旅を追ったドキュメンタリー「アニマル ぼくたちと動物のこと」。シリル・ディオン監督に本作の見どころを聞いた。 【写真】この映画の写真をもっと見る * * *
科学者たちが「6度目の大量絶滅」と呼ぶ問題が出発点でした。過去40年間で絶滅した脊椎動物の個体数は60%以上です。同時にいま気候問題について多くの若者がデモをしていることに感銘を受けました。彼らは未来に希望が持てず絶望的になっている。そんな状況を放っておけない。彼らが生きる意味を見つけ出す手助けをしたい。SNSなどで活動を目にしていたベラとヴィプランの2人にコンタクトを取り、彼らの目線から問題を追うことにしました。 行く場所と会う人だけを設定し、そこで彼らが何を感じどう反応するかを見つめました。登場するのは知人や尊敬する人、推薦された人などさまざまです。フランスで食用ウサギの畜産農家を訪ねたときの彼らのショックは大きかったですね。私たちもあんなふうに飼育されているとは知りませんでした。しかしあの農家は自分から取材してほしいと知らせてきた。そうせざるを得ないつらい現状をわかってほしいという思いからでしょう。フランスは農業に重きを置く国ですが、それでも畜産も農業も生産にかかった費用より安く売らされる状況に陥っているのです。 2人の成長は映画に映る通りです。特にベラに大きな変化をもたらしたのは哲学者バティスト・モリゾとの出会いでした。「人間なんて嫌い」と言う彼女に彼は「人間だって生き物だ。動物の保護をしたいと思ったら、人間も保護の対象になる」と言います。あの言葉は私の目も覚ましてくれました。
いまの状態をこのまま続けると地球は住めない場所になってしまいます。動物が絶滅していくということは、ゆくゆくは人間も絶滅するということです。経済成長を続けることが本当に幸せなのか? 2人の旅に同行し、ぜひみなさんにも考えてもらえれば幸いです。 (取材/文・中村千晶) ※AERA 2024年6月3日号
中村千晶