お茶の間にマイケルがいた時代 「スリラー」爆売れの裏にあったポップミュージックの“転換点”
ちなみに米大統領選は、それぞれの陣営が使用する音楽にも注目が集まる。民主党候補のハリス副大統領が使用するのが自由を掲げるビヨンセの「フリーダム」、いっぽうのトランプ陣営は、ローリング・ストーンズやセリーヌ・ディオンらに楽曲の使用を断られたりしつつも、カントリー歌手、リー・グリーンウッドの「ゴッド・ブレス・ザ・USA」を使用するなど、「グレート・アゲイン」な機運の高まりを目指すように感じられる。 ■「スリラー」爆売れ 原田さんは、このポップミュージックの最大の転換点に、同じくアメリカによるMTVの隆盛、そしてミュージックビデオの大きな進化をあげる。その代表は言うまでもない、キング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソンの「スリラー」だ。 “史上最も売れたアルバム”「スリラー」の発売は82年11月。翌年シングルカットされた「ビリー・ジーン」「ビート・イット」のミュージックビデオが人気を集め、同年12月にゾンビがダンスする14分間のショートフィルムの「スリラー」がとどめをさすような形でそのまま84年に突入したという流れだ。 「マイケル・ジャクソンと並び、MTVによって世界的なブレイクを遂げたアーティストがマドンナでしょう」 原田さんは、アーティストが大きな人気を獲得していく中で、ビジュアルがさらに重要視される時代になったと指摘する。 「カルチャー・クラブやデュラン・デュランといったイギリスのバンドがアメリカのチャートの上位に食い込むことができたのも、ミュージックビデオなどのビジュアル面でのインパクトが大きいです。デヴィッド・ボウイが映画『戦場のメリークリスマス』への出演、同時期に発売されたアルバム『レッツ・ダンス』などで再注目されたのも、MTV時代に合わせたサウンド面、ビジュアル面での大胆な変化が手伝ったのではないでしょうか」 ■FM雑誌とレンタル店 原田さんは、80年代なかば、お茶の間に大きく洋楽が浸透した理由のひとつに、「メディアの進化と浸透」もあげる。