脳腫瘍、尿で発見へ 金大研究グループ、検査方法の確立に道筋
●アミノ酸減少が目印 金大の研究グループは20日までに、採取した尿を検査することで脳腫瘍を発見する方法に道筋をつけた。悪性脳腫瘍で最も多い「膠芽(こうが)腫」となった患者の尿は、アミノ酸の一種「D―アスパラギン」が減少していることを突き止めた。画像では発見が難しく、診断が遅れることで治療が難しくなる脳腫瘍の早期発見が期待される。 近年、がんが増殖する際に栄養素としてアミノ酸を利用することが分かっている。研究グループは、この性質に着目し、膠芽腫の患者から摘出された腫瘍組織でアミノ酸を解析。すると、腫瘍組織は通常の脳組織と比べ、D―アスパラギンの濃度が増加していた。 一方、患者の尿中のD―アスパラギンの濃度は健常者に比べて減っていた。治療によって膠芽腫を摘出した後の患者の尿は、健常者とほぼ同じ濃度に増加していた。 膠芽腫と診断される患者は全国で年間2200人ほどといわれる。2年生存率が50%以下とされ、再発率と致死率はほぼ100%と治療が難しい。 CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像装置)などの画像診断で見つけることができるが、症状が現れてから病院を受診する患者が多く、治療成果の向上には早期発見が求められていた。 研究に参加した脳神経外科学の中田光俊教授によると、他のがんでもD―アスパラギンの尿中濃度が低下する可能性があり、今後は脳腫瘍に限定されるか調べる。中田教授は「尿を採取して脳腫瘍の発症が判断できれば、患者にとって優しい検査が実現する。再発したかどうかも早期に分かる」と指摘する。 九州大の吉本幸司脳神経外科教授は「この知見は脳腫瘍の治療成績を大きく改善させ、他の臓器がんにも適用される可能性がある。がん医療全体に貢献する」とコメントした。 研究には和田隆志学長や金大附属病院検査部の中出祐介副臨床検査技師長のほか、金大医薬保健研究域医学系脳神経外科学、脳神経内科学、腎臓・リウマチ膠原(こうげん)病内科学などが携わった。アミノ酸を分析するKAGAMI(大阪府茨木市)が協力した。研究は2020年の北國がん基金の支援を受けた。 研究成果は20日、国際学術誌に掲載された。21~24日に金大で開かれる「D―アミノ酸国際学会(IDAR)」でも発表される。