肥満や足が遅い人のための登山隊も出現、エベレスト登山がここまで普通になった訳
■登頂の大行列ができる理由
マッケイは登山に先立ち、バージニア州のアパラチア山脈でハイキングし、5キロマラソンを走り、足踏み運動用のステッパーで鍛えるなど、「できる限りのトレーニング」を試みた。 「それが私の日課の大半だった」と、彼女は言う。「正直なところ、エレベスト登山のコースは予想とは違っていた。たいへんだったけれど、なんとかなった」。 おそらく最も重要なのは、リアルタイムの山の気象トラッキングシステムの登場だ。おかげで、登山者は、山を登り続けるのに適した天候がいつになるかをほぼ正確に予測できるようになった。 「以前は、山に登ってから好天を祈るしかなかった」と、彼は言う。「今は衛星が2、3時間先まで天気を教えてくれる。それで事態が一変した」 山頂に向かう登山者の渋滞が発生するのは、好天を予測できるシステムのせいだ。ソーシャルメディア上では「ラッシュアワー」状態の登山者たちを映した数々の画像や動画が注目を集めている。 「エベレストの頂上をめざして押し寄せた登山者が大行列を作る画像があるが、あんなことになるのは、複数の大規模な登山隊が同じ日に登頂することを選択するからだ」と、アドベンチャー・コンサルタンツのオグルは本誌に語った。 近年、エベレストに関しては、山頂まで続く登山者の長い行列や、ゴミだらけのベースキャンプを映した動画や画像がソーシャルメディア上に出回っている。しかしマッケイによれば、そうした動画は、エベレストに登るということが(たとえ頂上に到達しなくても)どういうことなのか、その全貌を伝えていないと言う。 ネパール観光局によれば、今年すでに600人以上の登山者が標高8849メートルの山頂に到達している。 アメリカ人有名登山家アラン・アーネットによれば、ネパール側から登山する外国人登山家を支援するシェルパ(山岳ガイド)は900人に上る。最近再開されたチベット側登山口には、さらに100人の外国人登山者と100人のガイドがいた。 ■登頂の成功率が急上昇 調査会社スタティスタのデータによると、エベレスト登頂成功者の数は急増しており、過去10年間で毎年平均414人が登頂に成功している。標高約5364メートルのベースキャンプなら、年間約4万人が到達している。 成功率の急上昇にはいくつかの要因があるが、そのうちのひとつはごく単純だ。70年以上前ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリーが初めてエベレストを制覇したときと比べて、昨今は登頂に必要な肉体的条件がいくらか軽減されている。登山靴や登山服、その他の道具も改良を重ねて負担を軽減するように作られている。 「エベレストはどのシーズンだろうと、人気があると思う。エベレスト登山のロジスティクスの合理化が進むにつれて、すべてがより効率的になった。率直に言って、登頂は10年前よりも挑戦しやすくなっている」と登山専門会社マウンテン・プロフェッショナルズのオーナー、ライアン・ウォーターズは本誌に語った。 それでも、エベレスト登山には危険が伴う。今シーズンは登山者8人が死亡し、3人が行方不明になっている。 一方、ネパール人登山家のプンジョ・ラマは14時間31分で登頂し、女性最速の記録を達成した。また、シェルパ族の山岳ガイド、カミ・リタは30回目の登頂に成功し、自身がもつ最多登頂記録を更新した。