父「娘であってほしい」 中山さんの家族悲痛 能登町・久田川で遺体
●豪雨1カ月余り 能登町鈴ケ嶺の久田川で、奥能登豪雨で行方不明となっている中山美紀さん(32)=輪島市町野町=の可能性がある女性の遺体が見つかった24日、父勇人(はやと)さん(62)は声を振り絞りながら「娘であってほしい」と繰り返した。豪雨の発生から1カ月余り、帰宅を待ち続けた家族に届いた着衣が似通った遺体発見の報。能登半島地震後、一家6人が肩を寄せ合い暮らしてきた仮設住宅は深い悲しみに包まれた。 【写真】遺体を搬送する警察車両=24日午後7時38分、能登町鈴ケ嶺 ●祖父「地震の犠牲者」 石川県警から一家に「久田川で遺体発見」の連絡があったのは24日午前。昼すぎに仮設住宅を訪れた警察官から遺体の衣服について説明を受け、勇人さんは「娘で間違いない」と覚悟を決めたという。 遺体は久田川にかかる橋付近の土砂から見つかった。勇人さんは2日前も現場近くに足を運んでおり、「あそこは捜索隊が何度も捜してくれたが見つからなかった。雨でちょっとずつ泥が流れてようやく出てきてくれたんやと思います」とつぶやいた。 「孫やとしたら、やっと供養できる」。美紀さんの祖父勝さん(87)は神妙な面持ちで語った。 元日の地震で一家の自宅は全壊。美紀さんは地震で仕事も奪われ、不明になる約2週間前に穴水町で清掃員としての就職がかなったばかりだった。勝さんは「地震がなかったらこんなことにならんかった。地震の犠牲者や」と悔しさをあらわにした。 県警はDNA型鑑定などで遺体の身元確認を進める。幼い頃からいつも美紀さんと一緒だった真(しん)さん(28)。朗らかで家族思いの姉の手掛かりを探しており、「まだ姉と決まったわけではないが、姉だとしたら良かった」と言葉少なに話した。