「顔も腫れあがり、髪の毛もむしり取られていた」妹が殺され償い求めた遺族 加害者からの賠償金は全額払われず 相手の口座に残っていたのはたった“931円”「憎みたくなくても憎んでしまう…今の制度では」
加害者に命じられるも賠償は全額支払われず
加害者に対して「許せない」。そんな思いを抱く中、受刑者に命じられた賠償金も全額、支払われていないと言います。 (稲田雄介さん)「損害賠償は2980万円と大きな金額をもらえた判決だったが、実際に判決が出てから約2年弱経つのですが、実際に払われているのは600万円のみでした」 賠償命令制度は刑事裁判の有罪判決確定後でないと実施できない制度です。そのため、遺族自身が相手の資力や資産などを調べるにもすぐには動けない現状についても話が及びました。 (稲田雄介さん)「まずはすぐに動けない、殺人事件の場合ですと裁判まで1年以上期間を要しますし、事実認定を要するまでに1年半はかかってしまう。いくら相手を恨めしい、憎いと思っても事実認定をされたあとでなければ、責任や賠償を求めることができない。相手に時間を与えてしまうということです」 『損害賠償で何とか少しでも償いをしてもらいたい』そう思っていた稲田さんが相手の資力などを調べると、口座にはわずかな金額しか残っていなかったということです。 (稲田雄介さん)「相手は持ち家がありましたが、1年半という期間があくと、その間に家を手放し、配偶者への財産分与もなされていた状態でした。そして口座には931円しか残っていませんでした。その931円が償いなのかなと。分相応ではないのかなと、憎みたくない人間でも憎んでしまうんですよね、今の制度ではどうしても」
「故人に思いはせる余力のある生活を送らせてもらいたい」
稲田さんは相手からの賠償金の未払い問題と向き合いながら、それ以上に事件で大切な人を失い、精神的にも辛い現状を次のように話しました。 (稲田雄介さん)「人の命を電卓ではじくことは僕はナンセンスだと思います。包括的に支えることが、この立場に立って思うのは必要だなと感じます。一番嫌だったのは、恨みつらみで目が曇ってしまって、故人との思い出が生活に忙殺されたり忙しくなって、薄れてしまうことなんです。せめて生活の立て直しができる、故人に思いをはせる、悲しめる余力のある生活を送らせてもらいたいなとこの立場に立って思います」
加害者の大半は賠償金を“踏み倒し”
日本弁護士連合会が2018年に行った調査では、加害者に賠償を求めたケースで、裁判などで認められた賠償額のうち実際に被害者に支払われた金額は、殺人事件で13.3%、強盗殺人事件で1.2%などとほとんど支払われていないのが現状です。 さらに判決から10年が経つと時効を迎えてしまうため、加害者側からの支払い義務がなくなってしまいます。そのため被害者は、加害者の逃げ得を阻止するためにも、再び裁判を行う必要があります。 稲田さんが所属する「犯罪被害補償を求める会」では国に対して賠償金の立て替え制度の創設を国に求めています。