国による給食無償化、課題多く 地域の努力や公平性、財源どうする
文部科学省が初めて行った学校給食無償化実態調査は、実施状況や給食費など自治体間の違いを改めて浮かび上がらせた。一方、無償化した自治体の9割が「子育て支援」を目的と答えており、国民生活の経済的苦境を示す形にもなった。岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を掲げたことで、全国の自治体から要望が相次ぐ国による完全無償化。その主な課題を整理した。 【データで見る】給食無償化の自治体数や格差
1食の格差
学校給食法は、光熱費や調理に伴う人件費などを除く食材費を「給食費」として保護者から徴収すると規定。文科省調査では2023年5月現在、小学校の平均最高額が福島県の5314円で、最低額が滋賀県の3933円。中学校が富山県の6282円、滋賀県の4493円と、1・4倍近い“1食の格差”が生じている。 調査では明らかになっていないが、同じ都道府県でも市区町村間で金額は異なる。地場産農産物の積極活用や調理法、食数などに違いがあるためで、国が一律支援する場合、地域の努力や特性をどう認め、生かすかが課題になる。
平等への配慮
牛乳、主食、副食を提供する「完全給食」の小学校98・8%、中学校89・8%と過去最高となった一方、おかずと牛乳の「補食給食」、牛乳だけの「ミルク給食」もある。そのほとんどが離島だったり山間部だったりするため、荒天で船便が止まったり食材を運送する業者がなかったりと完全給食を実施できない事情を抱えている。 また、完全給食の学校でも、食物アレルギーで給食を食べられない児童生徒や、給食と持参弁当が選択式になっている自治体もある。そうした「給食実施校で給食を食べていない」児童生徒は全体の3%に当たる28万5000人に上る。 国が無償化する場合、個別事情で不平等にならないような配慮も不可欠となる。
膨らむ財源
日本農業新聞が23年11月に行った独自調査では、自治体の7割が財政難などを理由に国による恒久無償化を求めた。一方、今回の23年度文科省調査では、年間給食費の総額を4832億円と算出。無償化自治体の支出額は膨らみ続けるが、国が無償化する場合でも財源を巡る課題に直面するのは避けられず、子育て世代以外の理解も求められる。(給食取材班)
<メモ>学校給食無償化
学校給食の完全無償化は、文科省が2017年度に実施した簡易調査では4・4%の自治体が実施。日本農業新聞が23年11月に行った独自調査では28%と急増。今回の同省調査は23年9月時点で行われた。
日本農業新聞