「土ドラ」に異変…!単なる「おじさん」の成長ドラマとは違っていた、『おっパン』の「おもしろさ」の本質
「古いおじさん」がアップデートされていく
『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか! 』は原田泰造主演のドラマだった。 【一覧】「令和最高の女優ランキング50」1位長澤まさみ、最下位はまさかの… 土曜23時40分からの「土ドラ」の枠で放送されていた。 なかなか気になるドラマであった。 主人公はいまだ日本のそこかしこにいるであろう「古いおじさん」である。 会社や家での発言は昔の日本のままだ。 「お茶は女の人が淹れたほうがおいしいだろ」 「お前、男だろ! 押しが弱くてどうする」 「こんな女みたいな男、どこがいいんだか」 そういうことを言い続けている。 そこそこの地位と発言力があるから、まわりはいちいち注意しない。あまりに酷いときは指摘されるが、でも自分が間違ってるとは考えていないので、意に介さない。 そういう「わかっていないオヤジ」が、徐々にいろんなことに気づいて「アップデート」していくさまを描いたドラマであった。
困ったおじさんから「わかっている」おじさんへ
ドラマの入口は「うちの息子にゲイがうつったら困るから近づかないでくれ」と言いだす困ったおじさんであったが、ドラマの出口(最終話)ではゲイ同士の結婚の仲人を務めて、その場で大泣きしていた。「かなりわかっている」おじさんになっていた。 ドラマ構造としては、蒙昧な世界理解しかできなかった旧型おじさんが、いろいろあって、蒙を啓かれ、覚醒して、世界をより存分に生きるようになる、という物語である。 そのアップデートを眺めているぶんには、つまり成長していく大人を見つめているのは、とてもおもしろい。お話として、満足する部分である。 ただ、このドラマのおもしろさの本質はそこではなかった。 ストーリーよりも、出てくるキャラクターが、みな心地いい存在だった、というのがより大事にされていたとおもう。 謎や、不思議や、事件や、空港占拠やテロというようなスリリングなことはまったく起こらず、それでも飽きずに見られるのは、それはもうキャラクターによるものである。何だかんだと全話を通して見つづけたのは、その「登場人物の気持ちよさ」にあったのだ。 それは中心人物だけではなく、端々までそういう配慮がなされていた。 最初はとっつきにくくても、じつはそれぞれ懸命に生きていて、近づいて話しをすると、とてもいい人だったことがわかる。その細かい心地良さが積み重ねられていく。その丁寧さに心動かされていった。 そして、原田泰造は、こういう二面性の役がとても合う。