企業型DC普及へ、大学生が法案づくりに挑戦 「優秀賞」は国会議員にプレゼン【けいざい百景】
会社員の長期的な資産形成を後押しする政策を考えよう―。大学で法律を学ぶ学生が、企業型確定拠出年金(DC)の普及を促す法案づくりに挑んでいる。米系運用会社が主催する公募コンテスト形式の金融教育プロジェクトに賛同した教授が、ゼミ授業の一環として学生に法案作成を呼び掛け、学生は9月までに法案をまとめる。このところ資産形成に対する関心が高まっていることに加え、コンテストで最も優秀な2組に選ばれれば国会議員の前でプレゼンテーションする機会が得られるとあって、学生は目を輝かせて取り組んでいた。(時事通信経済部 上仲保順) 【図解】公的年金の運用実績 ◆中小企業、導入にハードル 5月下旬、東京都豊島区の立教大学キャンパス。法学部の島村暁代教授(社会保障法・労働法)のゼミに所属する2~4年生13人が企業年金に詳しい外部講師、森戸英幸慶応大教授の話に耳を傾けた。 大学の金融教育は経済学や金融論などを専攻する学生向けが大半で、法学部の学生向けはまだ多くないのが現状だ。しかし、島村教授は「私的年金は公的年金とともに日本の社会保障制度の中で重要な位置を占める。企業型DCを労働法などの観点から学ぶ意義は大きい」と話す。 DCは私的年金の一つで、導入する企業が掛け金を支払い、社員は提案された商品の中から自分で選んで運用する。少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)などと並び、働き手の有力な資産形成ツールだ。 運用商品には、定期預金や保険といった元本確保型のほか、市場の動向次第で価値が変動する投資信託などの選択肢がある。投信などは元本割れのリスクもある一方、長期的視野で運用し、価値が高まれば、大きな利益が期待できる。転職した場合は新しい勤務先のDCに資産を移し、運用を継続できる。 米国で先行して広がった企業型DCは、日本でも過去約20年、大手企業を中心に導入が進んだ。ただ、雇用の約7割を占める中小企業では、経営者の関心が低いこともあり、導入割合が低くとどまっている。森戸教授が制度の概要などを説明し、「若い人らしい柔軟な発想を生かし、どう導入を促していけばいいか話し合ってください」と語りかけると、学生は四つのテーブルに分かれ、議論を始めた。