「職業高等教育機関」って何? 教育再生実行会議が創設提言へ
学制の在り方を検討していた教育再生実行会議が7月にもまとめる第5次提言の中に、新しい学校種として「実践的な職業教育を行う高等教育機関」の創設が盛り込まれる見通しとなりました。大学などと同様に学校教育法第1条で定める学校に位置付け、新設のほか専門学校からの転換も想定。専門学科(かつての職業学科)など高校の新卒者だけでなく、社会人の学び直しの受け皿となることも期待しています。なぜ、こうした提言が出てきたのでしょうか。
実践的な職業教育がアベノミクスに必要
教育再生実行会議では、今年2月の段階で既に「実践的な職業教育を重視した高等教育機関」が検討課題に挙がっていました。 高等教育機関の代表例といえば大学ですが、大学は「学術の中心」(学校教育法第83条)であり、近年は産学連携やインターンシップなどが進んでいるとはいえ、医師や教員などの養成を除いては、必ずしも職業に直結した実践的な教育が行われるわけではありません。一方、専修学校は「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成」(同第124条)する学校です。高校卒業者を対象とした専門課程を置く専修学校を「専門学校」と呼び、高等教育機関と位置付けられています。 経済再生を最重要課題とする第2次安倍内閣にとって、雇用の流動化を見越して「職業人として自立した人材を育成していく」(4月の会合での安倍首相発言)ことは、アベノミクスの「第3の矢」として成長戦略を描く上でも不可欠なのかもしれません。
大学側の反対で「課程」に格下げ?
「実践的な職業教育を行う高等教育機関」という発想は、教育再生実行会議のオリジナルではありません。2011年1月の中央教育審議会答申で提言されていたのが「職業実践的な教育に特化した枠組み」です。実務経験を基盤とした実践的な知識・技術を教えるには新たな学校種が必要であり、既存の高等教育機関の活用を検討すべきだとしていました。 これを受けて文科省や全国専修学校各種学校総連合会(全専各連)は「職業実践的な教育に特化した学校」の制度化を目指したのですが、大学などの反対もあって実現しませんでした。代わりに今年度からスタートしたのが、専門学校の「職業実践専門課程」です。企業などと密接に連携して最新の実務の知識・技術・技能などを身につけられる職業教育に取り組む学科を文部科学大臣が認定する制度で、第1号として472校の1373学科が認定されています。 専修学校関係者によると、新たな学校種の創設を諦めたわけではないといいます。職業実践専門課程は、そのステップだというわけです。今回の教育再生実行会議の提言は、一度停滞した流れに勢いをつけるものだと言えるでしょう。