現代美術家・青木野枝と三嶋りつ惠の二人展が東京都庭園美術館で それぞれが鉄とガラスを用いてアール・デコの装飾空間に新たな光をあてる
アール・デコ様式の瀟洒な建築で名高い旧朝香宮邸を本館とする東京都庭園美術館は、自館の美しい装飾空間を活かした展覧会を開催することに力を入れている。今回は、現代美術の第一線で活躍する青木野枝と三嶋りつ惠の作品を館内の各所に配することで、新たな視点から館の装飾空間に光をあてる企画展を、11月30日(土)から2025年2月16日(日)まで開催する。 【全ての画像】三嶋りつ惠《VENERE》ほか広報用画像(全16枚) 青木野枝(1958-)は、鉄を溶接し、空間に線を描くような彫刻で表現の地平を切り拓いてきた彫刻家。一方、三嶋りつ惠(1962-)は、無色透明のガラス作品を通して場のエネルギーをすくいとり、それを光に変換する制作を行ってきた。ふたりの用いる鉄とガラスは、旧朝香宮邸を彩る装飾として、シャンデリアやレリーフなどにも多用されている。こうした素材の親和性も背景に、幾度となく館を訪れたふたりの作家はアール・デコの装飾空間と対話を重ね、今回の展覧会のために一期一会の展示プランをつくりあげたという。 作家自身が歴史的な装飾空間に配した現代作品が、ラリックらフランスの当時の芸術家たちの作品と時を超えた競演を繰り広げるのが見どころのひとつだが、なかでも注目されるのは、ふたりが今回のために展開した大型のインスタレーションだ。重い素材とされる鉄に向き合う青木は、鉄を溶断する時に現れる内部の「透明な光」から様々なインスピレーションを得ており、一方、三嶋は身の周りに溢れる光の表情に心を寄せ、ガラス作品を通して「光の輪郭」を描き出そうと試みてきた。光に対する意識は異なるものの、ともに光に特別な想いを寄せるふたりの作品が生み出す陰影に富んだ空間と、時間や季節ごとに移ろう光を受けて変化する展示風景が、観る者に特別な体験をもたらしてくれるに違いない。 新作の公開のほか、作家インタビューや作家自身が撮影した写真イメージ、制作工程がわかる映像や資料の紹介もある。現代を生きるふたりの作家が今、何を想い、何を見つめているのかにふれられるのもまた、現代美術の展示の興味深いところだ。 関連プログラムにも力を入れている同館では、今回もまた作品との出会いを深め、対話をつむぎだす多様なプログラムを予定している。詳しくは、公式サイトでご確認を。 <開催概要> 『そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠』 会期:2024年11月30日(土)~ 2025年2月16日(日) 会場:東京都庭園美術館(本館+新館)