米政府、中国の軍事利用を警戒-年内着工のカンボジア運河事業
(ブルームバーグ): 中国が資金を提供しカンボジアで進められている17億ドル(約2600億円)規模の運河計画に、米政府が警戒を強めている。
米国はこのプロジェクトを巡り透明性を高めるようカンボジアに求めている。同国における中国の軍事的プレゼンス強化につながる可能性があるほか、カンボジアや中国に接するベトナムにとっても潜在的な安全保障上の脅威になり得る。
カンボジアの首都プノンペンから沿岸部のケップ州まで約180キロメートルに及ぶフナンテチョ運河の建設は年内に着工予定。
昨年10月に中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関する国際フォーラムが北京で開催された際、国有の中国路橋工程がこの運河の開発契約を結んでいた。
在プノンペン米国大使館で広報外交を担当するウェスリー・ホルツァー氏は運河事業に関するブルームバーグからの質問に対し、「カンボジア国民は近隣諸国やより広範な地域の人々と共に、地域の水管理や農業の持続可能性、安全保障に影響を及ぼし得る大規模な事業について透明性を確保することで恩恵にあずかる」と答えた。
カンボジアのフン・セン前首相は建設予定の運河について、経済活動を促進するためだけに利用されると説明している。
同国初の内陸河川しゅんせつプロジェクトとして注目されるフナンテチョ運河は、完成までに約4年を要し、全長はスエズ運河よりわずか10マイル(約16キロメートル)短い。他の多くのインフラ事業と同様、軍事目的に使われる恐れがあり、ベトナムも同様の懸念を示している。
中国はタイ湾にインド太平洋地域では同国初となる海外基地を建設しようとしていると米政府は考えており、この運河プロジェクトがタイ湾からの軍艦の航行をサポートする可能性もある。メコン川の水量など環境への影響も懸念されている。
ホルツァー氏によれば、米国はカンボジア当局に対し、メコン川委員会と緊密に連携し、プロジェクトの詳細をさらに提供し、適切な環境影響調査に全面的に参加するよう要請している。