福利厚生費「半額」サービスも 広がるアルバイト“厚遇”【WBSクロス】
対策に悩む企業も
ただ全ての企業が大きな金銭を投入できるわけではありません。年間2000戸以上を手がけるハウスメーカー「アイダ設計」。茨城工場で働くおよそ80人のうち、アルバイトは50人近くを占め、欠かせない存在です。しかし待遇改善には壁があります。 「前々期(23年3月期)に(原材料高騰などで)大幅な赤字を出した」(アイダ設計の曾田大輔専務) 直近では黒字回復できましたが、アルバイトへの大きな投資がしにくい状況です。 そのアイダ設計にやってきた男性、企業の従業員向けに福利厚生サービスを提供する「ベネフィット・ワン」の営業担当者です。提案したのは、去年4月に始めた福利厚生の企業のコスト負担が正社員と比べて最大50%安くなるというサービスです。 「この最大50%の割引というところ、アイダ設計はどのぐらいの割引?」(アイダ設計の曾田専務) 「(アルバイトの)人数や就業時間に応じて20%か30%ぐらいの割引は提供できるかと」(「ベネフィット・ワン」営業本部の藤田遼河さん) ベネフィット・ワンの福利厚生サービスを導入した企業の従業員は140万件以上の割引サービスを利用可能になります。例えば飲食店の料金が10%安くなるといった内容です。企業は従業員の人数に応じた会費を支払いますが、アルバイトであれば社員の半額の220円からで済むのです。賃上げより会社の負担が少ないとみて、アイダ設計は前向きに検討を進める考えです。 今、ベネフィット・ワンが手がけるパート・アルバイト割に多くの企業から引き合いが来ているといいます。 「正社員よりも元々パート・アルバイトの非正規労働者は流動性が高い。簡単に辞められてしまうので、まずはここを定着させるのがプライオリティー(優先順位)が高い。これだけインフレと大騒ぎしているので、効率よく可処分所得を上げていくと」(ベネフィット・ワンの白石徳生社長) 可処分所得を上げるとはどういうことなのでしょうか? 3000人以上のパート従業員にベネフィット・ワンの福利厚生サービスを導入する富士薬品を訪ねるとパート従業員からは「クーポンを見せると、(家族)全員分のデザートがサービスされたりする」「家族で出かけるときの水族館や遊園地のクーポン(など利用する)。小さな(割引)サービスであっても、回数を重ねると大きい」と声が上がります。 他にも動画配信サービスの割引など日常生活で使える割引を活用することで、可処分所得のアップが期待できるといいます。 さらに「仕事と介護、育児といったものを福利厚生サービスを使って、少しでも支援できれば」(富士薬品の森島將人人事部長)といいます。 例えば全国1000カ所以上の拠点で子供を預かってもらう際、毎月3000円の補助が受けられるというもの。こうした育児や介護の割引サービスの充実がパートの定着や採用に繋がると期待しています。 「福利厚生サービスのPRこそ、働く先を選択してもらう一つの差別化になるのではないか」(森島人事部長) ベネフィット・ワンでは、アルバイトの待遇改善はさらに広がるとみています。 「労働集約型のサービス業、飲食や宿泊、あるいは小売りは一番パート・アルバイトの比重が高い業種。インフレによって(福利厚生の)ニーズがより高まった感覚がある」(ベネフィット・ワンの白石社長) ※ワールドビジネスサテライト