「ほぼ全店まっ黒」ビッグモーターが不正まみれになっていった“仕組み” 伊藤忠も簡単には変えられない
法令を順守した事業場は、全国に5か所だけ 処分で焼け野原
国土交通省はビッグモーターの一連の不正に対して、2023年7月から2024年3月まで全国130の事業場に対して監査を実施し、3月29日にその結果を公表しました。法令違反なしとされた事業場は、全130事業場の5事業所。率にしてわずか3.9%でした。 【奇跡のビッグモーター?】130店のなかで“完全シロ”だった5店舗とは(画像) 先にその店舗を上げると、群馬県館林市の「館林店」。ここは全国で唯一、認証と指定の両方を兼ねる事業場として違反なしという結果でした。また、車検を行わない認証工場では「福生店」(東京)、「南柏店」(千葉)、「宇都宮南店」(栃木)、「太田店」(群馬)の4事業所も違反なし、という結果でした。 簡易な整備を除いて、エンジンやブレーキなど安全にかかわる分解整備は、認証を受けた事業場でなければできません。一般に認証工場と呼ばれ、ビッグモーターは全国に130事業場(調査当時)を有していました。 ●認証工場としての処分(全130事業所) ・事業停止…114事業場 ・文書警告、口頭注意…11事業場 ・違反なし…14事業所 認証工場として違反がないとされていても、指定工場として問題ありとされた場合もあります。認証工場の中で、自動車の点検整備後に工場内で車検を行うことができる事業場をいわゆる指定工場と言います。同社では認証工場130事業場のうち、指定工場が102事業場ありました。 ●指定工場としての処分(102事業場/130事業所の内数) ・指定取消…37事業場 ・車検業務の停止…41事業場 ・文書警告、口頭注意…23事業場 ・違反なし…1事業場 指定工場の設備で車検を行うためには、検査に責任を持つ資格者「自動車検査員」が任命されている必要があります。国交省の監査では、資格者の解任も行われました。 ●指定工場で検査を行う自動車検査員の処分(102事業所) ・解任…46人/33事業場 半世紀足らずで従業員約6000人の企業に成長したビッグモーターの内実は、かなり無理を重ねたものでした。 成長に伴う全国的な不正の広がりは、創業者の兼重宏行社長(当時)と宏一副社長(当時)の独裁的なリーダーシップに影響されたものと理解されています。2人を核にした経営陣の“恐怖経営”が、そうさせたのではないか。伊藤忠が買収し、創業家が経営に関与しなくなれば、ビッグモーターの体質は健全な方向に向くのではないか――。一般的にはそう考えられています。