嗚呼、レザーフェイス!『悪魔のいけにえ』のドジっ子な魅力【豆魚雷の「遊星からの物欲X」】
洋画やアメコミのグッズを多数取り扱うことで、映画ファンにお馴染みのキャラクターショップ「豆魚雷」のスタッフが、ホラーキャラクター&グッズへのアツい愛を叫ぶ連載「遊星からの物欲X」。第4回は、トビー・フーパ―監督によるスラッシャー・ホラーの金字塔『悪魔のいけにえ』から“レザーフェイス”ことババ・ソーヤーをピックアップ!ギャップ萌えあふれる、キュートな魅力を語ってもらった。 【写真を見る】ディテール再現がパーフェクト!“レザーフェイス”フィギュアの名品たちを隅々まで堪能 ■“レザーフェイス”にドジっ子萌え! みなさんこんばんは、サムゲタン市川です。さて、まもなく10月1日(火)がやってきます。これがなんの日か、賢明な皆さんはもうお分かりになっていることでしょう。そう、ご存じ『悪魔のいけにえ』(74)の本国公開50周年記念日です!いやあ、めでたい。祝日になっていないのが謎なくらいですね。 『悪魔のいけにえ』は、同年公開の『暗闇にベルが鳴る』(74)と共にスラッシャー・ジャンルの礎を築いた作品。本作がなければきっと後年になって現れる著名な殺人鬼たちの登場は遅くなっていたことでしょう。 しかし“レザーフェイス”ことババ・ソーヤーは、『ハロウィン』(78)のマイケル・マイヤーズや『13日の金曜日』(80)のジェイソン・ボーヒーズの先輩と呼ぶには、ちょっとばかり情けないかも…?ホラー映画史に名を残す殺人鬼のなかでも、ババは人一倍人間臭くドジっ子で、私はそんな姿に愛おしささえ覚えるのです。 「人殺しを可愛いだなんて!」とお思いになられる良識派の方も少なくないはず…なので、今回は彼のキュートな魅力を、心を込めてお伝えしていこうと思います! ■力持ちで足も速い!家族に優しい孝行息子 故ガンナー・ハンセンによって演じられたババ・ソーヤー。存知の通り、人間の顔を剥いで作られたマスクが“レザーフェイス”の異名を持つ由縁。身長は193cmとかなり大柄で、逞しい腕から振り下ろされるマレットの一撃は、その餌食となった者に立ち上がることを許しません。成人女性くらいであれば軽々と持ち上げてミートフックに吊るすことが出来るほどの力持ち。走りもなかなかに速い!小学校だったら人気が出るタイプでしょう。 しかしその屈強な外見と相反して臆病な性格で、予想外の出来事が起こるとすぐにあたふたしてしまいます。冷凍庫に押し込めた被害者が息を吹き返した際や、新たに現れた侵入者を殺害した後には過剰な動揺を見せ、思わず「大丈夫!落ち着いて!」と心のなかで励ましたくなるほどの慌てぶり。奇声を上げながらオロオロし、癇癪を起こしたり頭を抱えたりと、この巨躯で繰り出される子どもじみた仕草にはギャップ萌えを感じずにはいられません。 ラストでは思わぬ反撃を喰らい、自分のチェーンソーで右脚を斬っちゃうドジっ子な一面も。更にそのまま映画の主人公であるサリー(マリリン・バーンズ)を逃がしてしまうのですから、ドジっ子ここに極まれり!といった具合。 殺人鬼としてのババは冷酷で、殺人の瞬間に心の揺らぎを見せません。彼はただ外敵から身を守っているだけに過ぎず、部屋に出た虫を叩き潰すのと同じような感覚で殺人を犯すのです。しかし家族の前では大きな赤ん坊同然。これもまた大きなギャップ萌えポイントの一つです。 ババはソーヤー家の末っ子で、長兄“コック”ドレイトンと次兄“ヒッチハイカー”ナビンズの2人の兄がいるほか、祖父グランパ(じい様)との4人で一軒家に住んでいます。本当は屋根裏にミイラと化した祖母グランマがいたり、『悪魔のいけにえ2』(86)では三兄"チョップトップ"ロバートが登場するのですが…長くなるので本稿では割愛しましょう。 長兄のドレイトンはババにとって父親代わりで厳しい存在です。チェーンソーでドアを破壊したことがバレてしまった時はこっぴどく怒られ、縮こまる姿も。サリーを除く一行を始末したのか詰められると、表出性言語障害のせいか叫び声とジェスチャーでなんとか伝えようとしたり。「ほら!殺ったでしょ!」と言わんばかりに犠牲者が乗っていた車椅子を指差す仕草が愛いですね。 次兄のナビンズとは兄と言うよか悪友に近い関係なのか、気絶から目を覚ましたサリーの絶叫に乗じて一緒にはしゃぐ茶目っ気も。この時カトラリーをグーで握っているのが可愛いです。「そうだ、じい様を楽しませてやろう」とサリーの撲殺を提案された時には肩を掴まれ、まるで悪戯にでも誘われているかのような距離の近さを感じました。 おじいちゃんっ子のババは、じい様(グランパ・ソーヤー)に対して肩を優しくポンポンと叩き、食事を口に運んであげるなど気遣う姿勢を見せ、家族を思いやる心の持ち主であることが分かります。ちゃんと良い子してる! 父母はおらず、ばあ様もミイラと化した男だらけの家庭なので、上下関係はやや厳しめな印象。けれど恐らくは仲良くやっていけているのでしょう。この人間臭いところがたまらなく愛おしい。家族に優しく、決して忘れてはいけませんね。 ■ホラー界のファッショニスタ!実はとってもおしゃれさん ババは基本的に家族の命令に従って行動しているため、ほかの誰かになりたいという思いが強く、他人の人格を文字通り“身につける”為にマスクを被っているのです。彼を象徴するマスクは全部で3種類。それに応じて服装にも変化があります。 もっともよく目にするであろうこちらは通称“キリングマスク”。サリー以外の4人を殺害した時にも身に着けていたもので、黄色いエプロンと併せて仕事の制服と呼べるでしょう。額には横に広がる裂けたような傷痕があり、顔の持ち主がどのようにして殺されたのかを想起させますね。光が当たって虚ろな眼や半開きの口が覗くカットが印象に残っている方も多いのではないでしょうか。 ファッションの構成は縦にストライプが走る半袖のワイシャツに特徴的な模様が入ったネクタイ、デニムパンツにヒールの高いブーツと至って普通。顔皮のマスクと血濡れのエプロンさえ無ければ、結構好青年なんじゃあないかな。 ディナーの準備中に着用していたのが“オールドレディ”。家事をしている時に着けているようで、エプロンも花柄のような幾何学模様が並ぶデザインに。頭頂部に毛髪は無く、その代わり痛々しく大きな裂創が。服装はキリングマスク時と特に変わりないですが、ネクタイの位置に注目です。 エプロンを着替えたのであれば、ネクタイはその内にしまわれるはず…それが外に出ているということは、わざわざ取り出したということになります。衣類を汚さない為のエプロンなのに…なにやらネクタイに強い拘りや愛着がある模様。おしゃれさんですね。 そしてディナーの為におめかしした“プリティウーマン”。色白の女性から剥ぎ取ったのか、はたまたファンデーションを塗っているのか、右眼の上にある×印のような縫合痕が特徴的な美肌のマスク。アイシャドウやチーク、リップが少しばかり厚めに施されており、不器用な彼らしさを表しています。 ジャケットとスラックスに着替え、晩餐会にあわせたフォーマルな服装になるなどTPOも意識されています。エプロンがなくなったことでぽっこりお腹が目立って見えるのが可愛らしいですね!シャツやネクタイ、ブーツはやはりそのままですが、彼なりにファッションというものを楽しんでいることが分かります。 他作品に登場する殺人鬼たちは同じ装いで犯行を重ねることが殆ど。ババもネクタイだけは一貫して同じものを愛用しているようですが、劇中でここまで衣装チェンジを行う殺人鬼もそういないはず。衛生面が多少気になるものの、ホラー界のファッショニスタと言って過言ないでしょう。 ■デフォルメフィギュアがとってもキュート さて、ここからはババの可愛さを詰め込んだフィギュアをご紹介! まずはこちら。ネカがリリースするデフォルメフィギュアシリーズ「トゥーニー・テラーズ」に「キリングマスク」「プリティウーマン」がラインナップ!血濡れたチェーンソーを手にどっしりと構えた「キリングマスク」は、そこから覗く目元口元までしっかり作り込まれているのが嬉しいポイント。ネクタイがエプロンの中に入っちゃっているおっちょこちょいなところが可愛い。 「プリティウーマン」はチェーンソーダンスのシーンをピックアップ!やや縦に長くすることで躍動感を上手く演出しています。誇張気味なまん丸お腹がとってもキュート。付属のアルマジロ(の死骸)はマニアも思わずにっこり。 ■アクションフィギュアには、3種のマスクが付属 メズコトイズからは1/12スケールのアクションフィギュアも。なんと3種のマスクがすべて付属!「オールドレディ」の立体化はなかなか珍しいです。それぞれに合った服装にチェンジすることも出来る為、劇中の動きは殆ど網羅していると言っても過言ではございません。つまり怒られてしょんぼりしている姿も再現できるということ!デスクの隅に置きたいですね。 吊られたパムの足元に置かれていた血溜めのバケツやサリーの指先を切るために使われた骨柄のナイフなど、マニアックなオプションパーツに加えて始動音の鳴るチェーンソーまでも付属。料理用エプロンの柄が違うのは惜しいですが、この充実感はコレクターにとってたまらないはず。 ■1/6スケールのスタチューは、まさに決定版! 劇中の姿を完全に再現するのであれば、こちらのアイテムは欠かせません。コトブキヤの「ARTFX」シリーズに登場した1/6スケールのスタチューで、劇中映像や資料を徹底的に研究し、決定版を目指した珠玉の逸品。 これほどまでに精巧なスタチューは類を見ません。なんと言っても頭部だけでこの密度。マスクはエッジを追求するべく軟質レジンを使用し、その薄さと不透明度をも見事に落とし込みました。紐は手作業で結び合わせているという執念に近いこだわりよう。なんと睫毛も植毛…。なにがなんでも再現してやるぞという気概を感じます。表情も完璧で、虚ろな目と半開きの唇が可愛らしくもあり、恐怖心を煽るポイントでもあります。 ずっしり重量感のあるボディもそのままに、ババの背中ってこんなに広いんだなぁ…と飛びつきたくなるような体積の大きさでお届け。左腕のアクセサリーも、骨の数珠繋ぎにされがちなところは、しっかりとベルの付いたブレスレットを再現!頭部と左肘に仕込まれたボールジョイントの可動でスターターロープを引くことも可能です。 今後これ以上のクオリティの商品が生まれてくるのか、しばらくは超えられない壁として頂点に君臨しそうです。 ■劇中シーンを完全再現!オプションパーツにマニア感涙 そして最後はこちらのアイテム。ホラー映画関連グッズを送りだし、数多くのコレクターから注目される「トリック・オア・トリート スタジオ」から5インチのアクションフィギュアがリリース。発売予定は2025年1月。 「キリングマスク」「プリティウーマン」の2種展開ですが、これのなにが凄いって…。なんと同時期に「ドレイトン・ソーヤー」「ナビンズ・ソーヤー」「グランパ・ソーヤー&サリー・ハーデスティ」が発売されるのです。しかもじい様とサリーのセットにはディナーシーン・プレイセットとして食卓や、その上に並ぶ料理や骨の数々、そして椅子が3脚付属する豪華さ。椅子が3脚、ということは…ドレイトンやナビンズ、ババも揃えることであの地獄の晩餐会を再現できるということ! 流石にここまでのオプションパーツが付いてくるフィギュアはいままでありませんでした。まさか映画のワンシーンを丸々切り取るとは…。 でっかいけれども子どもっぽくて、凶暴なのにお洒落さんで、他人は簡単に殺すのに家族には優しくて。そんなギャップ萌えの塊のようなババ・ソーヤーの魅力が少しでも伝わっているとうれしいです。今後スラッシャー・ホラーを観る時には、シリアルキラーの仕草やファッションに注目してみるのもいいかもしれません! 文/サムゲタン市川(豆魚雷)