奥深い「食の演出」 ドラマの世界観や登場人物のイメージ…赤堀博美の果てなき探究心が紡ぐ新たな「食物史」「食文化史」
【フードコーディネーター・赤堀博美のおいしい秘密】 ドラマや映画の「食の演出」は奥深い。フードコーディネーター、赤堀博美の信条は「現場の誰もがおいしく食べられるものを作る」。「食事シーンのない日はガッカリする」と演者がこぼすほどの人気ぶりだ。 「台本を読んで、登場人物の設定、背景、性格を考えます。どんな町のどんな家で何を考えて暮らしているかとか」 分からないことは美術部のスタッフや助監督に確認。これが大切。 「例えば夕食シーンに『唐揚げを食べている』とだけある。母親が料理上手か大ざっぱかで盛り付けも変わりますよね」 脚本にあった「おでん」を用意したら、NGが出たことがあった。 「監督は名古屋出身で〝おでんイコール味噌おでん〟でした」 食器調達も楽ではない。 「1シーンで3テイクくらい撮りますから、お弁当を食べるシーンでは、同じ弁当箱が最低3つは必要。美術さんと手分けして探し回ったことも」 日本テレビ系「花咲舞が黙ってない」ではヒロイン・舞の実家が居酒屋で近しい人が憩う。 「料理の大皿を店のカウンターに並べると、演者さんが『今日はこれとこれ!』と品定め。料理が余ると収録後に楽しく召し上がってくださる」 ドラマの世界観や登場人物のイメージ通りの料理がそろうと、現場は盛り上がり、士気が上がるのは当然。「花咲舞」の人気料理に「ゴーヤの肉巻き」がある。特製レシピを紹介する。 高校時代、「大学で食物文化史を学びたい」と思ったことから始まった赤堀の「食業行脚」は、フードコーディネート分野で実績を上げ、新たな「食物史」「食文化史」を紡いでいる。 「妹に3人、弟に2人、私には1人子供がいます。6人が力を合わせて学園をもり立ててくれたらいいなと思っています。私は当分、総指揮を続けます(笑)」 =おわり (原納暢子) 【次回は「福本清三伝 無心―ある斬られ役の生涯」です】 【ゴーヤの肉巻き(2人分)】①ゴーヤ1/2本を5ミリの輪切りにし、種とわたを除き塩少々②木綿豆腐1/2丁を崩してゆでて水気を切る③豚バラ薄切り肉(150グラム)にゴーヤを乗せ、その穴に豆腐をスプーンで盛り入れ、豚肉で巻く④油小さじ1を熱したフライパンで両面を焼き、塩少々で味付け。皿に盛ってかつおぶしをかける。