【聖地巡礼】『呪術廻戦』「渋谷事変」の場所を訪れて分かった想像以上の作り込みと再現度
駅構内の細かい描写に注目
改札やホームなど、駅構内の描写も細かい。今どこで何が行われているのかが明確にわかる描き方であった。 五条悟が封印されたのは、地下5階の駅のホーム。吹き抜けを利用して線路の上に降り立つ姿は、五条らしく華麗であった。駅の看板や電車にあしらった色はブラウンであり、副都心線を彷彿とさせる。 乗り換えの路線やトイレ、出口など、駅に欠かせない様々な案内サインも、実際のものを忠実に再現していて細かい。 キャラクターたちの背景には必ずといっていいほど案内サインが映り込み、その数の多さから、駅はこんなにも情報で溢れていたのかと改めて実感する。 脹相との戦いでは、案内サインを利用して術式について解説していたのがお洒落であった。 虎杖が脹相と戦ったトイレや真人と戦ったエレベーターも、実際に渋谷駅構内にあるものをモデルにしている。もちろんどちらも絶対に真似できないが、戦いではその使い方に驚かされた。 そして個人的に心に残っているのは、七海の最後の場面。田園都市線や半蔵門線の改札前であり、乗車しようとするたびに必ず通る。改札以外にも、切符売り場、地上や他の路線に向かう階段や通路がある。駅構内の中でも開けた場所であり、情報量が多い場所であった。 七海が亡くなる最後の瞬間まで、背景は改札前のまま変わらない。そのせいで、改札の前を通るたびにあのワンシーンを思い出すようになってしまった。筆者同様、トラウマを植え付けられた人は多いのではないだろうか。
地上と地下のつながりを活かした画作り
渋谷の街の特徴の一つに、地下が広がっていることが挙げられる。地下にホームがある東急田園都市線や東横線、東京メトロ半蔵門線、副都心線は電車に乗るまでに階段で深く潜らなければならない。そして、地上には地下への入り口が至る所に存在するのも特徴である。 五条が地下5階の駅のホームで封印された時、日下部とパンダは渋谷ストリームにいた。渋谷の土地勘がないパンダは五条は遠くにいると思っていたが、実際はそのまま下に降りればすぐに辿り着くことができた。 こうした地下と地上のつながりを活かしたバトルが、虎杖、釘崎と真人との戦いである。 道玄坂小路で真人の分身と遭遇した釘崎は、「共鳴り」で真人を追い込んだ。分身した真人は本体と入れ替わるため、釘崎から一度逃げようと試みる。ここで真人の入れ替わりを成功させてしまったのが、「地上から地下までのアクセスの良さ」であった。 道玄坂から109横にあるA0出口に入ると、そのまま地下1階109前の本体がいる場所まで走る。分身が釘崎から逃げる様子、本体が虎杖から逃げる様子の場面の切り替わりが絶妙で、そこから長い地下通路で合流し、カメラの前で入れ替わる描写も見事であった。 この結果、真人の後ろにいた虎杖と視聴者のみが入れ替わりに気づき、後からその場に辿り着いた釘崎だけが気づけないという最悪な状況を生み出したのだ。 実際に歩いてみると、A0出口から真人の本体と分身が合流するまでの道には曲がり角による死角が多く、通路はかなり長い距離であることがわかる。渋谷の地下と地上のつながりを活かして入れ替わりを成功させ、相手を追い込むトリッキーな手法に脱帽した。