「ごくごく」CMで喉元通る効果音禁止 酒類業界、広告自主規制や適正飲酒啓発も厳しい目
サントリーグループが6日に発表した飲酒に関する新たな啓発活動「ドリンク スマイル」では、適正飲酒の大切さと同時に「酒のすばらしさ」を伝える。これまでも酒類業界は適正飲酒の啓発に加え、広告規制では厳しい自主基準を設けるなど取り組みを進めてきた。批判を受け、テレビCMで酒が喉元を通る「ごくごく」という効果音が消えたのも今や昔だ。飲酒に対する社会の目が厳しさを増す中、プラス面を訴え、巻き返しを図りたい考えだ。 【解説】ビール大手4社トップが考えるビール離れへの対策 「お酒は、なによりも適量です。」との広告を1986年から展開してきたサントリー。新たな啓発活動では、2025~30年までの間に延べ20万人を目標にセミナーを開催する。 従来の適正飲酒の呼びかけに加え、商品の試飲やバーチャル工場見学など体験を通じ、酒の価値を再認識してもらうような取り組みを拡充したのが特徴的だ。 酒類市場を巡っては、少子化や若者のアルコール離れで市場縮小に歯止めがかからない。今年2月には厚生労働省が飲酒による健康障害リスクを示した飲酒ガイドラインを初公表した。 サントリー幹部は記者会見で危機感をあらわにし、「前々からお酒の価値は伝えないといけないと考えていた」と述べた。 これまでも酒類業界はさまざまな取り組みを進めてきた。その一つが広告規制の自主基準で、過度の飲酒や無理強いなどにつながるような表現は禁じている。 具体的に禁止されている表現としては、テレビCMで「ごくごく」などの効果音や飲酒シーンで喉元をアップにする描写がある。策定当時、アルコール依存問題に取り組む団体から「ごくごくと飲むシーンはアルコール依存症者の脳を刺激する」との批判があった。 実際に同社を巡っては、5月に京浜急行電鉄とのコラボイベントで、チューハイ商品「こだわり酒場のタコハイ」にかけ、京急蒲田駅に「京急蒲タコハイ駅」とした看板などを設置。同団体から「公共性を完全に無視した愚行」と抗議を受け、広告の撤去を余儀なくされた苦い経験がある。 逆境の中で〝攻めの姿勢〟に転じた形となるサントリーの鳥井信宏社長は「飲むことは『悪』ではなく、ノンアルコールやソフトドリンクも含め、良いコミュニケーションをしていくためには必要と伝えたい」と語った。(福田涼太郎)