佐々木朗希を批判するのは老害? 移籍問題で日本社会の“悪い慣習”が浮き彫り「育ててもらった恩とか昭和か?」
社会人としては当然の決断? 擁護派の意見
ただ、それと同じかそれ以上に多いのが佐々木を擁護する意見だ。佐々木を“わがままな子ども”だと指摘する声もあるが、自分の夢を我慢してまで球団やファンのために尽くせという意見こそ、老害的で“古い大人”の意見だとする声もある。 そもそも、佐々木の今回の移籍は本当に不義理なのだろうか。 日本人メジャーリーガーが、ウン十億円という年俸をもらって夢の舞台でしのぎを削っているのに対して、佐々木は年俸8000万円。そんな中で、球団で数々の記録を打ち立て、チームの勝利に貢献し、グッズ販売も含めて多額の利益をもたらしてきた。給与に見合った活躍は十分にやってきたはずだ。 さらにあと2年といえど、スポーツ選手にとっての2年はあまりにも大きい。この2年で佐々木がケガなどをして、夢だったメジャーに挑戦できないことになったらどうなるのか。2年待てば巨額の譲渡金というのも、あくまで仮定の話でしかなく、保証された未来などない。 会社や集団への義理や恩義を重んじるあまり、個人が夢をあきらめなければならない風潮に疑問を抱く人も多い。 〈育ててもらった恩とか言われちゃうと昭和か? と返したくなる。一社会人の転職として考えたら良い選択でしょ〉 〈ロッテ佐々木朗希に「恩を返せ」って言ってる層って会社で辞めていく人に「恩知らず」って言ってる人と一緒じゃね? つまり老害。恩って何? 契約して仕事してただけだろ〉 〈佐々木朗希が叩かれまくってて、老害大国ニッポンを実感する〉 元参議院議員の外山いつき氏も、今年4月に自身のXにて、メジャー挑戦を希望する佐々木が“裏切り者”扱いされてしまうというニュースをとりあげ、〈なぜ、社会は若者の高い志を批判するのだろうか?もっと佐々木選手を見守り、彼の夢を後押ししてあげるべきだ〉と、日本社会の問題を指摘しながらコメントをしていた。
佐々木朗希を縛るのは日本社会の衰退を意味する
今回の佐々木のメジャー挑戦表明について外山氏はどう思っているのだろうか。 「野茂英雄氏がメジャー挑戦した時も同じような批判があったが、30年前のあの時代は“終身雇用”の名残りもあり、社会も時代も旧態依然としているものがあった。当時と今は、時代も社会も大きく変わり、動いているのに、どこか社会の風潮だけは未だに旧態依然としたものがある。 佐々木選手のメジャー挑戦に対して、球団に対する恩義や貢献度をあげて批判する方もいるが、彼は球団との契約の中で毎年結果を残し、年俸という形で評価を受けている。球団への恩、会社への恩。見えないもので縛ろうとするのは日本社会の悪い慣習であり、それが日本の生産性を下げているところもある。 能力を買われて、ヘッドハンティングされ、必要なところで、その能力を発揮するのは欧米はもとより、今の日本でも当たり前になっている。そして、それが失敗した場合は自分で責任を取らなくてはならない。誰にも責任はとれない。彼が日本球界で野球を続ければ、安泰だろうし、環境的にも楽だとは思う。 そんな、「安全地帯」からあらゆるリスクを取ってでも、大きな夢に挑戦する若者は希望の星である。若者の大きな志、挑戦を、批判し、縛るような社会であるならば、日本は衰退していく。我々は佐々木選手を温かく見守り、彼の挑戦を応援してあげるべきです」 またそもそも、佐々木とロッテの間には、“入団から5年経過したらメジャー挑戦を認める”との約束が入団時に交わされていたという説もある。そのため、この件で佐々木はもちろん、ロッテの決断についても、外野がどうこう言う話ではないのかもしれない。 なにはともあれ来年、夢の舞台で佐々木が笑っている姿を見るのが楽しみだ。 取材・文/集英社オンライン編集部
集英社オンライン編集部