正月気分の日本を揺るがした令和6年能登半島地震に際して、2016年の熊本地震を現地取材した筆者がぜひ伝えておきたいこととは!?
地方都市での災害はクルマでの避難が常識クルマで避難生活を送る人の命を守りたい!
筆者が今心配しているのは、地震によって自宅を失い、車上生活を余儀なくされた被災者がエコノミークラス症候群(整脈血栓閉栓症)を発症する危険性だ。 よく言われる「地震の避難の際にはクルマを使わないようにしましょう」との注意喚起の言葉は、あくまでも都市部に限った話であり、地方都市で震災被害により自宅に住めなくなった人は、そのほとんどがクルマを使って避難することになる。そして、避難所が定員に達していたり、子供やペットがいるなどの事情で避難所への入所を躊躇したりする場合には、そのまま愛車をシェルター代わりにして車中生活を送ることになるのだ。 近年はミニバンやSUV、軽自動車でもハイトワゴンが普及したことでシートを倒してフルフラットにできる車種が増えている。だが、被災者は着の身着のままで避難しているわけではない。さまざまな家財道具を自動車に積み込んで避難してきているのだ。そうなると、さしもの車内容積を誇るミニバンでもシートを倒して横になることが難しくなる。その結果、座ったまま休むことになり、そうした生活が長期に渡って続いたことでエコノミークラス症候群を多くの人が発症させたのだ。熊本地震による死者263人のうち、エコノミークラス症候群を含む「震災関連死」はその4/5に当たる208人にのぼり(地震発生日から2018年3月29日まで)、震災関連死のうち少なくとも60人は車中泊していたことが明らかになっている。今回はそうした二次被害で生命を失う人が出ることは何としても避けたい。 理想を言えば、自宅を失った人は被災地から離れた場所に移動して、そこでホテルやアパートを借りるなどして身体を休める場所で避難生活を送って頂きたいのだが、各種支援の受け取りや行政手続き、自宅や職場の後片付け、金銭的な問題などから地元を離れることはなかなか難しいと思う。ならば、せめて就寝時だけでも貴重品以外の荷物を外へ出し、シートを倒して休める環境を整えて頂きたい。その場合、問題となるのは車外に置いた荷物の盗難などのリスクだが、これは同じ避難場所の隣人同士コミュニケーションを取り合い、順番を決めて不寝番をするなどの対策を取って頂くようにするしかないと思う。 荷物を外へ出すことができず、座った姿勢で休まざるを得ない人は、意識して水分(スポーツ飲料などのイオン飲料が予防に良いとされる)を取るように心がけて頂き、歩行や足のマッサージなどを適時行い、なるべく長時間同じ姿勢でいないように注意して頂きたい。