「豆乳より、牛乳」「卵はたくさん食べても問題ない」栄養は食品から摂るべき理由【柴田博×和田秀樹⑥】
元気を維持する、柴田流ルーティーン
和田 食事以外の日常的なルーティンなどはありますか? 柴田 僕は7月で87歳になるんだけどやはり病気は持っています。脊柱管狭窄症とかね。だから杖代わりに、仕事で出かける日などはキャリーバッグを押して歩く。用事がない日はノルディックストックを両手に持ち家の近所を2000歩ほど歩くようにしています。駅までちょうど1kmで2000歩くらいだから。そうしておけば何かあっても電車までは辿り着けますから。 和田 なるほど。歩くことは大事ですね。 柴田 それからこまめに動くことですかね。僕は学生が集まれるような家を中古で買ったんです。敷地が150坪で家が76坪。30畳の部屋があって、そこに1学年20人ずつ集まってセミナーやカラオケをやる(笑)。表玄関から2階までは25段あるんだけど、2階のトイレしか使わないことにしてるんです。 和田 生活しながら、自然に歩く距離も増えますね。 柴田 1日5000歩ぐらいは歩いてますね。僕は根が怠け者だから、成り行きに任せているとやらなくなる。壮大な計画を立ててもできないんでね(笑)。 和田 無理をせずに続けられることが一番ですね。 柴田 前はジムに通ったこともあったんだけど、週に2日やっても大したことないんだよ。毎日歩くほうがいい。あとは、できるだけ人と交流するようにしてガチャガチャやってます。 和田 ボイストレーニングもされているとか? 柴田 そうそう。もともと音楽好きで歌ってたんだけどね。66歳の時に歯が5,6本抜けて入れ歯にしたのをきっかけに。僕は手先の器用な医者じゃなく喋り専門でしょ。入れ歯で滑舌が悪くなったら商売にならないので、声を鍛え直そうと思ったわけ。以来、個人レッスン20年間続けています。コロナ前は芸大の名誉教授で声楽家のオペラ科の名誉教授に教わってました。 和田 声を出したり、喉を鍛えることはとても大事です。 柴田 僕らの年になると誤嚥(ごえん)で死ぬ人がいますからね。鍛えたおかげで、僕は今でも高いソの音まで声が出ますよ。普通のシューベルトの曲は歌える(笑)。 和田 それはすごい(笑)。声を出すことは認知症にもいい。僕は認知症の人を多数診ていますが、詩吟やカラオケが趣味の人は進まないんですよ。声を出すことは脳にいいみたいです。 柴田 表現すること自体が大事です。お喋りもいいんです。喋る能力が落ちると、社会的な活動能力も減ってしまいます。僕もやらなきゃいけないことがたくさんあるので。お互いね、闘っていきましょうよ(笑)。 和田 はい(笑)。 柴田博/Hiroshi Shibata 医学博士。1937年北海道生まれ。北海道大学医学部卒業。桜美林大学名誉教授。東京都健康長寿医療センター研究所名誉所員。老年学についての研究と教育を一貫して続けている。『長寿の噓』『なにをどれだけ食べたらよいか。』など著書多数。 和田秀樹/Hideki Wada 精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て現職。30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。
TEXT=山城稔