コンビニ強盗確保の通称“茶道部ヘッドロック”は23歳女性。その素顔とは?「とにかくアニメが好きで…武術の経験はありません」
捜査協力に時間を取られてしまう弊害
――梁さんは今回、どのくらい有給を使用しましたか? 事件当日は祝日(敬老の日)でしたので、有給を使う必要はありませんでした。 容疑者に腕を噛まれていたので、翌日は捜査機関に提出するための診断書を作成するため、午前休を使いました。また、9月30日は検察官による事実確認がありましたので、午後休を使いました。 繁忙期などではなかったのでなんの問題も生じませんでしたが、人によっては捜査協力を「面倒」と感じてしまうかもしれませんよね。 本来、証言者として協力することは冤罪を減らす、被害者の泣き寝入りを減らす、という観点からも重要だと思うのですが。 ──今回のような強盗事件だけではなく、すべての事件において周囲の人の証言は大切ですよね。 そう思います。自分が事件の目撃者になったとき、「かかわり合いになったら時間を拘束されて面倒なことになる」と思ってしまえば、本来裁かれる罪が裁かれないかもしれません。 あるいは痴漢の被害者になったとき、恐怖に加えてそのような思考になれば、被害者なのに口をつぐむことになりかねませんよね。 捜査協力のために会社や学校を休むことがもっと認められれば、証言もしやすくなり、捜査もスムーズに行えるのではないかと思います。 ──今回の事件について、さまざまなリアクションがあるかと思いますが、感じたことを教えてください。 友人や家族は「すごいな!」という感嘆の声をあげていました。ネットでは「茶道部強い」とか(笑)。 「茶道部ヘッドロック」が検索ワードに入ったりしていて、恥ずかしいようなうれしいような気持ちもあります。 一方で、容疑者が海外の人だったことを受けて、外国人が住むことによって治安が悪くなるといった意見もあるようです。 私は日本人ですが、外国の人をみてすぐに「悪いことをしそう」などと邪推する考え方には賛同できません。 さらにいえば、私は9年近く海外に住んでいましたので、海外に治安の悪い場所があることは承知していますが、それを個人の凶暴性と結びつけるのはおかしいと考えています。 なにより、一緒に戦ってくれた店員さんも海外の方です(笑)。 このことからも、外国人を一律に危険視するのがいかにナンセンスかわかります。日本人として、外国人に暴言を吐く人が減っていけばいいなと願っています。 ※ 武術とは縁遠い生活を送ってきたひとりの女性が、危険を顧みず容疑者を取り押さえた。インパクトを確かに残した「茶道部ヘッドロック」。 そのキャッチーさの裏側に、意外にも社会が透けて見える。若き梁さんは自らの行動を極めて客観的に振り返りながら、社会への骨太な提言を軽やかに行って微笑んだ。 取材・文/黒島暁生
黒島暁生