美少女スマホゲームの世界に引きずり込まれるホラーゲーム『MiSide』が不穏で怖い。愛が重い少女「ミタ」と一緒にゲームをしたり、自撮りをしたり、ヨモツヘグイをしたりする【WePlay Expo 2023】
“愛が重いヒロイン”、いいよね……。 なんて言っていられるのは、マジの“重い”ヒロインに出会っていないからかもしれない。 【この記事に関連するほかの画像を見る】 今回ご紹介する『MiSide』のストーリーは「愛が重すぎるヒロインにより、主人公がゲームの中に閉じ込められる」というもの。そんなインパクト抜群な設定のもと、ホラー感あふれるゲーム内から脱出するためにいろいろ頑張り……ときにはヒロインとイチャイチャ遊んだり、自撮りしたり、ご飯を食べたりする。 これだけ読むと「怖くなさそう」に見えるかもしれないが、ちゃんと怖い。別に包丁を持ったヒロインに追い回されるわけでもないし、いきなり画面いっぱいにヤバい顔面が映り込むわけでもないのに、怖い。 そう、本作『MiSide』はセンスあふれる設定もさることながら、そんな“怖さ”や“不穏さ”の演出が非常に巧みなホラーゲームなのだ。 本稿では中国・上海にて行われた大規模インディーゲームイベント「WePlay Expo 2023」にて展示された本作の体験版のインプレッションをお届けしていく。なお、こちらはまだ開発中のタイトルということもあり、日本語に対応してこそいるものの、一部の表示が崩れている部分があることはご容赦いただきたい。 取材・文/久田晴 ■ホラー演出が巧みすぎて、かわいい絵柄なのにちゃんと「進みたくない」 「ヒロインによってゲームの中に閉じ込められる」という設定が“キモ”である本作、そのスタートはちょっとチープな育成シミュレーションのような画面だ。 ここではなぜか家中に散らばった彼女の服を集めて洗濯カゴにぶち込んだり、彼女が欲しがる携帯テレビを購入するために謎のメモリーカード(?)を分解するバイトをやらされる。正直なところ、この時点では何のゲームだかさっぱり分からない。 だが、少し進むとストーリーは急展開。突如としてゲームの中……ヒロイン・ミタの部屋の中へと引きずり込まれてしまう。 のんびりとした育成ゲームから一気にホラー展開に落とされるスピード感、突如として見下ろし視点から一人称視点へ移る意外性。筆者がプレイ前まで本作の設定を把握していなかったこともあり、この導入にはかなりの衝撃を受けた。このイントロの“掴み”の良さが、この後続いていく一人称ホラーの没入感を引きだたせているのが『MiSide』の魅力だ。 いざ放り込まれた彼女の部屋の中は一見すると普通……ではなく、なぜかいたるところにハロウィンのカボチャが置いてある。 正式に確認をとったわけではないが、恐らくこれは本イベントの開催時期とハロウィンが近い(?)こともあっての特別バージョンと思われる。個人的には怖さがちょっと薄れたので助かったけど。 さて、大量のカボチャを除けば薄暗い部屋の中は不気味そのもの。突然の急展開で心臓が縮み上がっているところに、いたるところにある写真やポスターの人の目が赤く光っていたり、いきなり人形がこっちを向いたりといった細かなホラー演出で的確に精神的ダメージを与えてくる。 ここからしばらくはホラーアドベンチャーらしいアイテム探しがメイン要素となるのだが、どこからともなく聞こえてくる彼女の声もふくめ、絵柄のかわいさに反して“ホラーの空気感”は相当なもの。一人称ホラーでおなじみの「ドアを開ける緊張感」や「後ろを振り向く恐怖」はしっかりと味わえる出来栄えだった。 特に先ほどまで部屋があったはずが、いきなり長く先の見えない廊下になるシチュエーションの怖さはすごい。 前も後ろも怖いし、壁中に書いてある「Who are you?」の文字も怖い。単純に「進みたくねぇ~」というストレートな恐怖心が湧き上がるのはもちろん、ここはゲームの中の世界で、彼女の思い通りに作り替えられてしまうんだな……という絶望感も一緒に味わえる。 そんなこんなでビビりながらも進んでいくと、主人公は謎の転送装置を起動させることに成功する。しかしゲームから脱出することはかなわず、自分がいるのは元通りの彼女の部屋。これからどうしよう……となった瞬間、振り向いた先にいたのは。 ■かわいい彼女とヨモツヘグイをしよう! そう、本作『MiSide』では意外にも早く黒幕(?)であるヒロイン・ミタと出会ってしまうのだ。てっきりあの手この手で遠隔的にビビらせて来るのだと思っていたので、このタイミングで現れたのにはかなり驚かされた。 今回の体験版に限った話にはなるかもしれないが、本作でジャンプスケア的な演出が占める割合は少ない。むしろ上の項で触れたような細かい怖さを積み重ねる“雰囲気”の方向に寄せた作品で、ここでのミタの出現にしても全力で脅かすような登場の仕方はしていなかった。しかも、彼女の見た目はクリーチャーとかではなく普通にかわいい女の子である。 それなのにビビってしまうのが『MiSide』のホラー演出の巧みなところ。今回のデモではこの場面から継続してミタが登場し続けるのだが、直接主人公を追い回すということはなく、むしろ一緒に料理をしたり、ゲームをして遊んだり……と、まるで普通の恋愛アドベンチャーゲームのような展開になる。 にもかかわらず、ちょっと料理中に顔が別の方を向いているだけで「振り向いたとき顔面が崩れているんじゃないか?」とか、ちょっと離れて歩いているだけで「いきなり後ろから襲いかかってくるんじゃないか?」と疑心暗鬼になってしまう。それもこれも、冒頭の急展開で受けた衝撃が色濃く残っているが故だろう。 ちなみに先述の通り、デモの中では彼女と食事するシーンがあった。しかしこの食事の後には途端に画面中にノイズが走り、主人公はその場に座り込んでしまう。ミタはそんな主人公の手を取って洗面所へと連れて行ってくれ、薬を飲ませてくれるのだが……そこで鏡に映った主人公は、顔にヒビが入った“壊れかけ”のような姿だった。 「黄泉戸喫(よもつへぐい)」という言葉をご存じだろうか。簡単に言えば「黄泉の国の食べ物を食べる」という意味で、それはすなわち「現世へ帰れなくなる」ことを意味する。これは完全に考察の域ではあるが、主人公はゲームの中の料理を食べてしまったせいで、越えてはいけない一線を踏み越えてしまった……のかもしれない。 今回のデモはこの後、ミタの部屋でカードゲームをしているうちに彼女のクローゼットから謎の音が響き、それを追求しようとして止められるシーンで幕を閉じる。ミタが隠しておきたかったものの正体や、彼女が最後に見せた悪魔的な笑みの意味はきっと製品版で明らかになることだろう。 『MiSide』は「ヒロインによってゲームの中へ閉じ込められる」という設定が中心となっている作品であるのは間違いない。だが、その怖さを支えているのは細かな演出の積み重ねだ。つまり本作はクールなアイデアをただ形にしただけでなく、効果的なアプローチをするための試行錯誤を怠っていない、非常に“硬派な”ホラーゲームと言えるのではないだろうか。 またヒロイン・ミタの映し出し方はかなり絶妙であり、怖いと同時にちゃんと「かわいく」描かれているのも好印象。プレイの後半では「このままゲームの中で一緒に暮らしても良いんじゃないか?」と思うような瞬間もありつつ、やはり最後には不気味さをマックスに押し出してくるなど、プレイヤーの心を的確に揺さぶってくる。 本作はPC(Steam)向けに2024年の発売を予定しており、正式に日本語への対応も行う見通しである。愛が重すぎるヒロインに惚れられた主人公がたどる運命はいかなものとなるのか、発売を楽しみに待ちたいところだ。
電ファミニコゲーマー:
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