格納庫に眠る貴重なプロペラ機を故郷の空へ 能登出身の元ANAパイロット、クラウドファンディングで修理費募る
元国際線パイロットで茅野市の飛行機製造会社社長の橋本徹さん(73)が、航空大学校(宮崎市)で廃棄の危機にある米国製小型双発プロペラ機ビーチクラフトH―18を修復し、空に戻そうと挑んでいる。1930年代から製造されたシリーズで、国内に残っている物は珍しい。橋本さんは能登半島地震で被災した石川県羽咋(はくい)市出身。能登半島の空で飛ばし「復興へのエールを送りたい」と考えている。 【写真】航空大学校の格納庫で眠るプロペラ機「ビーチクラフトH―18」
定年退職後に飛行機製造開始
橋本さんは全日本空輸(ANA)のパイロットとして世界各地を飛び回り、米国で自家用飛行機の文化が根付いていることに感銘を受けた。定年退職後、自分で飛行機を造りたい―と格納庫となる建物を探して茅野市の元工場にたどり着き、2014年、飛行機製造を始めた。米国製飛行機製造キットの組み立てや販売も手がけた。
航空大学校によると、H―18は8人乗り。海上保安庁や日本航空などでかつて運用され、米国では今も現役機が飛ぶ。同校の機体は1972(昭和47)年に持ち込まれて訓練機として使用されていた。88年に登録抹消となり、格納庫で眠っている。
「これだけの物をなくすのはもったいない」
公立パイロット養成機関の同校はパイロット不足の「2030年問題」を受け、18年度に定員を1・5倍に増員。訓練機を増やすことになり、H―18を置くスペースがなくなった。橋本さんは同校OBから聞き「とても貴重なクラシックプレーン。何としても鉄くずにしたくない」と思った。小型機修理などを手がけるエアロラボ(大阪府)の技術者と昨年春、実機を調べ、手入れをすれば十分動く感触を得た。
野太い独特な音を奏でる「星型エンジン」を搭載し、アナログな計器が所狭しと並ぶコックピットでさまざまな操作を手動で行うH―18は、航空史の一端が垣間見える存在。同校の井戸川真理事長(70)は「同型機の中で最後に製造された機体。これだけの物をなくすのはもったいない」と話す。
観光利用も想定、クラウドファンディングで寄付募る
修復に向け、エアロラボの技術者が協力する。それでも機体の輸送費や米国でのエンジン修理費などが必要だ。H―18を格納庫に置ける期限の3月末までに、5500万円をクラウドファンディング(CF)サイト「CAMPFIRE(キャンプファイア)」で募る。