女性が製作現場を牽引 監督が「ほぼ私の実話です」…香港映画『作詞家志望』 日本も負けてはいない『においが眠るまで』
【アジア映画の覚醒~コロナ禍からの反転攻勢~】 コロナ禍を耐えたアジア映画界が〝反転攻勢〟を開始した。大阪市で3月1~10日に開催された第19回「大阪アジアン映画祭」の会場はこの数年、コロナ禍で自重していたアジア映画人の来日が解禁され、観客との交流が復活。長い冬眠から目覚めたかのようにパワーアップした代表作が集まった。全5回でお勧めの力作を紹介しよう。 アジアの映画界が明らかに変わりつつある。男性中心だった製作現場を女性が動かし始めているのだ。 コンペ部門にノミネートされた香港映画「作詞家志望」のノリス・ウォン監督は5年前の長編デビュー作「私のプリンス・エドワード」で新人監督賞や最優秀脚本賞などを相次いで受賞し、香港や世界の映画祭を席巻。今最も勢いに乗る女流監督だ。 作詞家志望の女子高生、ロー(ジョン・シュッイン)が主人公。プロを目指し作詞コンテストに応募したり、音楽事務所を回って奮闘する姿を描く。 「ほぼ私の実話です」。上映後の舞台あいさつでノリス監督が明かすと観客席からどよめきが起きた。「結局、作詞家になれず映画監督になりましたが」と話すと、再びどよめいた。 「2作目のプレッシャーは大きかった」と明かし、「次に何を撮る? そうプロデューサーに聞かれ、私の自伝を読み、これを映画化しようと…。製作費は自分たちで集めました」。 主演のジョンは香港の人気女優。「有名な作詞家でもある彼女しかいない」と出演依頼したという。監督に女優。香港映画界を牽引する女性映画人の底力を見せつける。 日本も負けてはいない。同じくコンペ部門候補の「においが眠るまで」の東かほり監督はデザイナーから映画の道へ進んだ異色の監督だ。 亡くなった父の思い出をたどり、全国のミニシアターをめぐる女子高生、ヒノキ(池田レイラ)。コーヒー豆の焙煎店を営んでいた父の匂いを頼りに、ヒノキの探し物は見つかるのだろうか…。 次作は小泉今日子出演