万一に備えて相続税額が知りたい→「3ステップ」の計算方法で即解決!
■ステップ3 「実際の相続税の納付額」を計算する 次は、先ほど算出した相続税の総額に対して、実際に各相続人が取得した財産の取得割合を掛けます。これが各相続人の実際の相続税の納付額になります。 相続人は、それぞれ正味の遺産額(基礎控除額を差し引く前の額)に対して、自分が受け取る分が何%に当たるのかを計算します。たとえば、Aさんの相続財産が、正味の遺産額の30%に当たる場合は、Aさんの納税額は、相続税の総額に30%を掛けた金額になります。 相続税を納めるのは、法定相続人であるか否かには関係なく、実際に相続財産を受け取った人たちです。法定相続人であっても、遺産をもらわなかった場合や、金銭では評価できない遺産のみを受け取った場合は、相続税を納める必要はありません。 一方、法定相続人でなくても相続財産を受け取れば、受け取った割合に応じて相続税を納める必要があります。そのときは、本来納めるべき相続税額に2割を加算した額を納める必要があります(これを「相続税の2割加算」という)。たとえば、被相続人の孫養子、兄弟姉妹、甥・姪など、一親等の血族および配偶者以外の人は、本来納めるべき相続税額に2割を加算して課税されます。 ● 配偶者のみが活用できる 配偶者の税額の軽減 配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が相続で得た財産のうち、一定の金額までは相続税がかからないという制度です。 この制度における「配偶者」とは、法律上の婚姻関係(婚姻届を出している)にある人に限られます。事実婚をしている人や内縁関係にある人は認められません。 非課税金額は、次頁・図30のA・Bいずれか高いほうです。ほとんどの場合、Aの1億6000万円以内におさまりますが、1億6000万円を超えて相続しても、法定相続分までは非課税となります。
配偶者の税額の軽減の適用を受けるには、相続税の申告が必須となります。 巨額の非課税枠が設定されているため、配偶者が相続した財産はほぼ非課税となり、納税自体は不要になります。しかし、「軽減により、納税が不要であること」の証明として、申告はしなければなりません。 配偶者の税額の軽減では、配偶者が実際に取得した財産をもとに、軽減される額を計算することになっています。 たとえば「被相続人の財産の2分の1」といった、あいまいなかたちではなく、土地ならどこの地番のどれだけの面積で評価額がいくら、預金ならどの銀行の何という口座の何円分など、具体的に計算できるかたちでなければなりません。 申告には、遺産分割協議書の写しなど、配偶者が取得した財産がわかる書類の添付が求められます。遺産分割協議書の写しには、相続人全員の印鑑証明書も添付します。 つまり、相続人全員の合意のもと、具体的な遺産分割(あるいは遺言書に基づく相続手続き)を申告までに終えて、はじめて、配偶者の税額の軽減を受けられるのです。 なお、相続税の申告期限までに遺産を分割できなかった場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して相続税を申告し、3年以内に分割を完了して、更正の請求をおこなうことで、配偶者の税額の軽減を利用できます。 配偶者の税額の軽減の対象者は配偶者のみのため、配偶者の相続する財産を多めにすれば、他の相続人の相続税額を減らせます。 このことから、配偶者にめいっぱい相続してもらって、相続税を軽減する人もいます。 しかしこの方法は、配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)までトータルで考えると、相続税を押し上げることにもなりかねません(図30ケースA・Bを参照)。 次回の相続時に多額の相続税が発生しないように、初回の相続での熟慮が必要です。
株式会社エッサム