『虎に翼』で浮かび上がる朝ドラが描いてきた女性たちの言葉 分岐点となる前半戦を総括
強く、優しく、繋がり合う『虎に翼』の女性たち
『虎に翼』の女性たちは、物語の内と外関わらず、強く、優しく、繋がり合う。何より女性たちと子供たちの会話によって、「家」制度をしなやかに解体してみせたのは印象的だった。第50話において民法の改正案を新聞で読み、「もし母・祖母の旧姓を名乗っていたら」と談笑するはると花江(森田望智)、直明(三山凌輝)たちの姿に、かつての家族写真が重ねられる。それは、偶然の産物である優未のくしゃみも含め何より自由を象徴していた。 とはいえ、女性を取り巻く環境が劇的に変わるわけでなく、「家制度の名残が消えない」大庭家の中で、自分の人生を生きることを宣言した梅子は、はるが亡くなり、寅子は忙しく、家事の一切を背負い過ぎていた花江にバトンを渡す。「自分が幸せじゃなきゃ、誰も幸せになんてできないのよ、きっと」という自戒を以て。それによって花江も「家を出る」という結末ではなく、猪爪・佐田家の家庭内の改革を、彼女らしい形で行ったのも良かった。さらに梅子のおにぎりは、それぞれの事情により若干の距離が生じてしまっている女子部の同志たち、崔香淑/汐見香子(ハ・ヨンス)、よねと寅子を知らず知らずのうちに繋げたのである。 一方、第14週は穂高との関係性が軸になりそうだ。寅子が弁護士を辞める前の会話のみならず、第49話・第50話における「私が君を不幸にしてしまった」発言といい、目上の人から受けがちなリアルなやり取りに、こちらまで穂高が苦手になりそうな今日この頃であるが、桂場(松山ケンイチ)の言う通り、穂高の言葉が彼女の「背中を押した」のは確かだろう。 その後会議の場で意見を言う寅子は「前の民法で言う家という庇護の傘の下において守られてきたという部分が確かにあるのだと思います」「しかし、今も昔も思っております。個人としての尊厳を失うことで守られても、あけすけに申せば、大きなお世話であると」と言う。それは元々穂高の講義で得た学びを通して深化していった思いでもある。だから第56話においても、星(平田満)曰く、寅子は「穂高先生の希望の光」であり続ける。2人は互いの関係にどう折り合いをつけるのか。
藤原奈緒