【大学野球】春秋連覇を目指す早大でチームを献身的に動かしているのは2人の学生コーチ
小宮山監督から学んだこと
背番号51。石原壮大(4年・日大習志野高)も川内と同じタイミングで投手コーチとなった。193cm右腕は高校野球引退後、1日14時間の猛勉強で、現役で早大に合格した。選手としてチームに貢献するのは難しいと考え、「早稲田の優勝に貢献したい」と新たなポストに就いた。小宮山悟監督、正捕手・印出と密に連携を取り、ブルペンに情報を共有。試合を動かしていく上で、重要な役割だ。 勉強熱心である。 「いつも新たな情報をインプットしている。聞かれたことは、いつでも答えられるようにしています。ウチの投手陣は自立した選手が多い。エースの伊藤樹(3年・仙台育英高)もこの春からエース番号11を着け、チームを引っ張っていく姿を強く感じます。チームで消化するメニューを率先してこなすことはもちろんのこと、一つひとつに対して意識的です。他の投手も任されたイニング、役割を全力でまっとうしようとする姿勢がある。春秋連覇を達成し、最強世代であったと言われるように完成形に持っていきたいと思います」 NPB通算117勝で、MLBでもプレーした小宮山監督から学んだのは、ごくシンプルであった。百戦錬磨の元プロが強調するのはこうだ。「絶対に抑えてやるという、バッターに向かってく気持ちが大事。その上で、テクニカルなことを磨いていくスタンスです」。 大学でのコーチ経験を生かし、将来はスポーツマネジメントの道へ進みたいという。大学卒業後は留学して、得意の語学を学んでいく。 川内も大学卒業後は、野球とは一区切り。商社へと進む。「複数のOBから『指導者にならないのか』と言われましたが、これまで野球しかやっていませんでしたので、今度は別の世界で頑張りたいと思います」。引退前にやらなければいけないことがある。 小宮山監督は常日頃から、末端の部員まで、早稲田大学野球部としての精神を植えつけたいと考えている。神宮の応援席を見れば、野球部の気質が分かる。グラウンドの選手25人が、一生懸命プレーするのは当たり前。控え部員の行動で、教育が行き届いているかの判断材料になる。 「部員162人。グラウンドでは162番目の部員まで、ちゃんと動くように見るようにしています。後輩に一つのメッセージを残したい」 川内はユニフォームを脱ぐその日まで、目を光らせる。いつの時代も「一球入魂」を追い求めるのが、早稲田大学野球部だ。野球を通じて、社会で役立つことを学ぶ。熱血学生コーチが、1901年創部の伝統をつないでいる。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール