失敗しない「戦略」の立て方は?難しい経営学をわかりやすくタイパよく学ぶヒント
著者によれば『1フレーズ経営学』(三谷宏治 著、SBクリエイティブ)は、ビジネス初心者や経営学の初学者を対象とした経営学の入門書。したがって提供すべきバリュー(価値)は、「有用な知識をタイパよく届けること」なのだそうです。 とはいえ、それはなかなか難しいことでもあるようです。なぜなら、そもそも経営学自体が「経営者が学ぶべきことの集合体」だから。そのため学ぶべき範囲は広く、多くの人には実体験のないものでもあるのです。 そこで本書では下記のような戦略を立て、経営学の基礎をわかりやすく伝えようとしているわけです。 ・インプット(投入時間)の最小化:本書でカバーする領域は事業レベルの基礎系中心。事業部長以下には求められない全社レベル、応用系の項目は捨てる。「読んでも頭に残らない」説明的な文章は極力減らす ・アウトプット(知識定着)の最大化:複雑な概念は図にして一目でわかるようにし、各項目の本質や洞察は印象的な「1フレーズ」でしっかり頭に残す。楽しみながら読めるような歴史的背景や面白い事例を豊富に取り入れる(「はじめに 『タイパ』もいいが、頭に残らなきゃ意味がない。」より) つまりはこのように、「コスパ」よりも「タイパ」が重視されているということ。とはいえタイパの分子はパフォーマンス(成果)なので、単に時間を短縮できるというだけでは意味がありません。そこで本書には、読んだものが少しでも頭に残るような工夫が施されているわけです。 きょうは1章「経営戦略 事業の方針を示す」のなかから、基本的な考え方である「戦略とは」内の「目的と資源集中」に焦点を当ててみたいと思います。
戦争にも目的がある?
戦略とは捨てることなり(18ページより) もとは軍事用語である「戦略(ストラテジー)」が企業経営の世界で用いられるようになったのは、1950~60年代のこと。戦争になぞらえることの是非はともかくとしても、戦争からの学びは経営者たちを惹きつけ続けることになったのでした。 国家間の軍事力を伴う戦いには「戦争」「戦略」「作戦」「戦術」「実行」などのレベルがありますが、各々に「目的」が存在します。ナポレオン戦争からカール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』(1932)が生まれ、そこで「戦争目的」が議論されました。 彼は「戦争とは政治における国家間紛争の一解決手段である」とした上で、「戦争は相手の殲滅(筆者注:すべて滅ぼすこと)だけが目的ではない」と論じました。(19ページより) そして一般的に、戦いの行き着くところを決めるのは「その目的がどれくらい絞り込まれているか」という点。多少の戦力差があったとしても、「目的が曖昧なら負け、明確なら勝つ」ということ。いいかえれば戦争レベルでの目的が曖昧だと、どうしようもないことになってしまうのです。 そのいい例が、ロシアのプーチン大統領の「妄想」から始まったウクライナ戦争。この戦争がロシア軍を圧倒的に疲弊させることになったという事実は、まさに目的の曖昧さによるものだったと解釈できるわけです。(19ページより)