犯人の特徴をあぶり出し、容疑者を絞り込む「プロファイリング」の歴史...アメリカで普及したきっかけは?
<殺人犯の性格・行動を理解する近道として>
さらに、2008年には行動科学課の中に研究博物館が開設された(写真)。殺人犯が描いた絵や彼らが書いた手紙が集められ、その分析により、殺人犯の動機や性格を理解しようというわけだ。 こうした中でダグラスとレスラーは、殺人犯の性格や行動を理解する近道は、殺人犯自身に教えてもらうことだと考えた。そこで79年から83年にかけて、FBI捜査官が全国の刑務所を訪れ、36人の殺人犯にインタビューした。その結果、彼らは「性格」と「行動」の対応関係を突き止めた。つまり、犯罪者の性格と犯行形態を結びつけるパターンを見つけ出したのだ。 彼らによると、殺人犯は二つのタイプに分類できるという。計画性の高い「秩序型」と衝動性の高い「無秩序型」だ。 秩序型の犯罪者の犯行形態は秩序だっているが、無秩序型の犯罪者は秩序だっていない。そのため、犯行形態を見れば犯人がどちらのタイプなのかが分かる。つまりプロファイリングできるのだ。 <秩序型と無秩序型、それぞれの特徴> 犯行形態が秩序型か無秩序型かは、事件現場の痕跡から判断する。 秩序型の特徴は次の通り。①整然とした現場、②少ない遺留品(忘れ物)、③犯行地点と異なる死体遺棄地点、④自動車の使用、⑤隠された死体、⑥防御創(抵抗跡)なし、⑦人間として扱われた被害者、⑧殺害前の性的行為、⑨戦利品(記念品)は被害者の持ち物。 一方、無秩序型の特徴は次の通り。①乱雑な現場、②多い遺留品、③犯行地点と同じ死体遺棄地点、④徒歩か公共交通機関の利用、⑤放置された死体、⑥防御創あり、⑦物として扱われた被害者、⑧殺害後の性的行為、⑨戦利品は遺体の一部。 そして、現場が秩序型であれば、犯人も秩序型と推定できる。 犯人像は次の通り。①知的水準が高い、②社交的で魅力的、③口達者で欺くのがうまい、④優越感を抱き自己中心的、⑤キレやすい、⑥専門技能労働者、⑦既婚者、⑧行動範囲が広い、⑨事件報道を追っている。 一方、現場が無秩序型であれば犯人も無秩序型だ。 犯人像は次の通り。①知的水準が低い、②内気でパッとしない、③口下手でだらしのない風采、④劣等感・疎外感を抱いている、⑤重度の統合失調症患者、⑥無職か単純労働者、⑦未婚者(独居か親と同居)、⑧行動範囲が狭い、⑨性的経験に乏しい(性的代償行動を繰り返す)。 このようにアメリカでは、犯罪原因論が犯罪機会論のバックアップによって、科学的な捜査が進んでいる。日本においても、犯罪原因論一辺倒の姿勢を改めるべきではないだろうか。