「少年院に入って良かった」最後の入所者が語った言葉の意味とは サイクリングに盆踊り…「開放的処遇」の松山学園、70年の歴史に幕
8月初旬、松山市にある少年院「松山学園」に入所する少年が仮退院を迎えた。見送りに集まった教官を前に、社会復帰に向けた決意をこう語った。「自分の身勝手な行動が原因で失った信頼を取り戻すことは簡単ではなく、時間のかかることだと思います。それでも諦めることなく、少しずつでも努力していきたいです」 松山学園は来年3月末で収容業務を停止し、廃止する。今後、入所者を受け入れる予定はなく、この少年が最後の1人となる。 学園は矯正教育課程に施設外の活動を積極的に取り入れる、開放的な処遇が特徴だ。社会生活に近い環境を確保し、地域住民との交流を取り入れることで、気付きや内面の変化を促してきた。設置から今年で70年。最後の入所者となった少年が仮退院するまでの日々に密着すると、立ち直りに期待する周囲の「熱い」支援が見えてきた。(共同通信=熊木ひと美、山口裕太郎、広川隆秀) 【おことわり】 年齢や非行内容をはじめ、松山学園は少年の特定につながる情報は公表していません。プライバシー保護の観点から一部の画像は加工しています
▽サイクリングで出た「本音」 快晴に恵まれた7月中旬のある日。少年の姿は瀬戸内海の島々を結ぶしまなみ海道にあった。付き添ったのは所属する寮の主任、山本訓央教官ら3人。タイヤの細いクロスバイクにまたがった一行は眼前に広がる海原を望み、すれ違うサイクリストらと「こんにちは」とあいさつを交わしながらペダルをこぎ進めた。 社会貢献活動として、道中では公園の清掃活動にも取り組んだ。「こっちにも吸い殻が落ちているぞ」。山本教官に声をかけられると、少年は元気よく「はい!」と返す。首にかけたタオルで額の汗を拭いながら約1時間、黙々とごみを拾った。 目的地である愛媛県今治市の伯方島に到着すると、待ちに待った昼食の時間だ。皆で弁当を囲み、会話も弾む。サイクリングの感想を聞かれると、少年が言った。 「めちゃくちゃ気持ちいいです。でもごみ拾いの時はいらいらしました。『何でこんなに捨てるんだよ』って」