「世界で最もクールな街」に選ばれた日本唯一の街、渋谷から4駅の”未開発地帯”の圧倒的な魅力
個性的な店にクリエイティブで地元が好きな人たちが集うと考えると、街で過ごす時間が楽しくないわけはない。小さな店で隣り合えば顔なじみも増えやすいし、趣味性の高い店もこの街なら成り立つという決断がしやすいはずだ。 加えて地元の町会、商店街もノリがよく、イベント開催を報告すると「いいじゃん、面白そう」と町会でチラシを配ったり、掲示板に貼ったりして応援してくれると聞いた。 新しい取り組み、新しい人たちに対してウェルカムな雰囲気があるわけで、海外から訪れる人、暮らすようになる人にとってこれは大きなポイントになっているはずだ。
■外の人ではなく、ここに住む人を意識した高架下 ちなみに学芸大学の高架下は登場した時点から大きな話題になり、今も外から多くの人を集めている中目黒の高架下とは違い、この街に住む人を強く意識した「まちの縁側」というキーワードでリニューアルされている。 商店街と交差する位置にあり、ここで暮らす人達が出会える場として用意されたと言えばよいだろう。大きくメディアで取り上げられることは少ないが、街の人たちにとってリニューアルの満足度は高いと聞いた。
さて、海外からの目という意味では1つ、ほとんどの人が知らないであろう点を指摘しておきたい。筆者は2005年に学芸大学を紹介する記事をウェブで書いているのだが、そこで使われている筆者撮影の写真を借りたいとテレビ局から依頼を受けたことがある。 日本の原宿「KAWAIIカルチャー」の創始者とされ、2010年代以降、今では世界を席巻するKAWAIIカルチャーの世界的な認知度アップに大きく貢献したと言われる増田セバスチャン氏の番組を作るためにその写真を使いたいというのだ。
学芸大学西口商店街のオレンジや水色、黄色、赤とさまざまな色の看板が所狭しと掲げられた、日本人の目から見たらなんてことのない、いや、逆にごちゃごちゃしていてなんだかなあという風景の写真が彼の目からはかわいい商店街に見えたらしい。 ■どこかアニメっぽくて、ワクワクする そこから類推するに海外の人たちには学芸大学の商店街はどこかおもちゃっぽく、あるいはアニメっぽく、ワクワクするものに見えている。そしてそれが面白く、クールな街という評価につながったのではないか。見慣れた人にはそんなバカなと言われそうだが、ありえない話ではあるまい。
日本ではいまだにかなりの人たちが開発こそが街を魅力的にするものと信じているようだが、世界の人たちの街の見方はだいぶ違う。無理に合わせる必要はないものの、開発されてこなかった街、学芸大学が評価されていることを考えると、これからは開発以外のやり方を考えてみる必要もあるだろう。
中川 寛子 :東京情報堂代表