米地銀危機から1年、選択肢迫られる銀行-緊急貸出制度は11日終了
(ブルームバーグ): 2023年に起きた地銀危機で、その収束を目指して銀行への緊急貸出制度が時限的に導入された。ウォール街の銀行はこの終了に伴い、資金力を高める他の手段を模索している。
バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)はシリコンバレー銀行(SVB)の破綻後、金融システムの信頼を回復するために23年3月に導入された。このプログラムは11日の終業時をもって打ち切られる。米国の金融システムには潤沢な流動性を維持する手段があるのかという議論が再燃している。
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BTFP打ち切りは、量的引き締め(QT)によってバランスシートの縮小を今も続けている連邦準備制度を試すことにもなる。資金調達市場に亀裂が入り始めれば、そのプロセスは停滞し、銀行システムの安定性は再び揺らぎかねない。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米金利戦略責任者、マーク・カバナ氏は「調達環境が安定しているとはいえ、銀行は今も高い流動性バッファーを望んでいる」と指摘。「BTFPはそうした状況を反映した一要素だった」と述べた。
BTFPは米国債や住宅ローン担保証券(MBS)などの担保を額面通りの金額で評価し、銀行や信用組合に最長1年間融資する制度。昨年末にはこの制度で調達した資金を裁定取引に活用する金融機関が登場し、議論を呼んだ。連邦準備制度のデータによれば、6日時点での貸出残高は約1640億ドル(約24兆800億円)だった。
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プログラム打ち切り後に銀行が取る選択肢によって、金融システムで潤沢な流動性が維持されるかどうかが左右される。また連邦公開市場委員会(FOMC)が計画通りQTを継続できるのか、あるいは縮小ペースを減速する必要があるのかどうかにも関わってくる。
TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「流動性不足の領域には入っていないが、そこに近づいているため、スローダウンは理にかなう」と述べた。