鮮やかなビームがより映える!映像も音も最高なドルビーシネマで『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を体感してきた
2024年最速で動員100万人を達成し、興行収入も20億円を突破するなど大ヒットを記録中の『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(公開中)。2月9日からは、本作をよりディープに味わい尽くせるラージフォーマット版となる、「ドルビーシネマ」での上映がスタートしている。今回はひと足さきにドルビーシネマ版『FREEDOM』を体験することができたので、その迫力をレポートしていこう。 【写真を見る】ドルビーシネマ限定!シアター入口の特別映像が『FREEDOM』の世界へ誘う ※本記事には『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のネタバレにあたる記述が含まれます。未見の方はご注意ください。 ■「ドルビーシネマ」だとなにが違うの? 本編の細部の感想を語る前に、まずは簡単にドルビーシネマという上映方式について説明しておこう。ドルビーシネマとは、立体音響システムである「ドルビーアトモス」と独自のHDR(ハイダイナミックレンジ)映像技術で表現した「ドルビービジョン」を兼ね備えた、最高峰の音響と映像を同時に味わうことができる上映システムだ。 通常の上映方式の音響は、前方スクリーン内に中央と左右の3つスピーカーと重低音を感じさせるサブウーファー、そして左右側面に配置されたスピーカーによる5.1ch方式、さらに左右後方にもスピーカーを配置した7.1ch方式で上映される。このシステムでも十分に立体的な音響を味わうことができるが、ドルビーアトモスは天井にもスピーカーを配置している。その結果、通常では味わえないよりリアルな“上から聞こえる音"を再現することができるのだ。さらに映画館内に最大64台ものスピーカーが配置され、それぞれに異なるチャンネルの音を流すことができるため、視聴者を包み込むような音の空間が形成され、映像の世界の中にいるような音響感を味わうことができる。 ドルビービジョンは、映像の最大輝度を高めて明暗差などの階調を滑らかに見せ、色彩表現をより豊かにすることができる技術。HDRとは、この明るい部分と暗い部分の差を表現する技術のことを指している。強い光や暗い部分も色調がしっかりと再現されるため、よりリアルな映像感覚を味わうことができるシステムなのだ。 そしてこの最高峰の音と映像で観る『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、通常上映と比較すると、さらに細部を味わうことができる映画体験だったことがわかった。 ■戦場を取り巻く環境音…冒頭から『FREEDOM』の真価を発揮! 本作の物語は、アフリカ共和国オルドリン自治区へのユーラシア連邦のブルーコスモス軍が侵攻する夜間戦闘シーンからスタートする。だから映画が始まってすぐのタイミングで、ドルビーシネマの映像と音響の効果を体感し、『ガンダムSEED』の世界観に没入していくことになる。 夜間という映像全体が薄暗く感じる状況のなか、戦争映画のような重厚なタッチので描かれるモビルスーツ同士の戦闘。暗さのなかにも情報量が込められたこのシチュエーションでは、暗部までも美しい階調で描写され、通常上映と比較するとよりくっきりとディテールが見え、さらにモビルスーツの頭部カメラの発光や攻撃による爆煙などとのコントラストがより映えて見える。 そんなシチュエーションに合わせて、音響も遠くで響く爆発音、逃げ惑う人々の声、モビルスーツの足音や飛行音など、戦場を取り巻く環境音に包まれる。そして、そこに重なるように目の前に迫るモビルスーツの稼働音が明瞭に聞こえ、多重な音の立体感が映像の雰囲気を盛り上げてくれるのだ。 そんな劇場版らしくじっくりと描かれる戦闘シーンは、主人公のキラ・ヤマトが乗るライジングフリーダムガンダムの戦場介入によって雰囲気が一転。「ガンダムSEEDシリーズ」らしいスピード感と彩りの鮮やかなビームが飛び交うケレン味があふれる戦闘シーンへと突入する。冒頭の重厚感とは異なる、素早く動くモビルスーツの急激な音の移動や攻撃音が描写され、キラの圧倒的な強さをより立体的に体感することできる。 こうして、ドルビーシネマの本領を味わう冒頭戦闘シーンの後は、ドラマパートへと移るわけだが、空間に包まれる音の描写は、キャラクターたちが置かれている場所やシチュエーションにも臨場感を与える効果を発揮する。 ■ビームを中心とした攻撃やエフェクトが映える! 戦闘直後の戦艦アークエンジェルの格納庫内では、モビルスーツの整備を行う環境音が響き、工具の駆動音までも微細に表現。また、ファウンデーションの王宮での謁見シーンでは、硬質な壁で囲まれ、吹き抜け構造の高い天井という場所においては、特徴的なセリフの反響音までも聞くことができ、建物ごとに異なる空間の違いまでも体感することができた。 そうした映像と音響体験は、クライマックスの戦闘シーンではさらなる迫力を見せてくれる。ファウンデーションによる大量破壊兵器レクイエムを用いたオーブへの攻撃阻止、ファウンデーションに呼応したプラントのクーデター軍との戦闘を背景にした艦隊戦とモビルスーツ戦は、映像と音響が奔流のように溢れていく。 ドルビービジョンによる輝度の高い映像に「ガンダムSEED」らしいビームを中心とした攻撃やエフェクトが映え、スピード感がありながらも回り込むように動くカメラワークで映される3Dモデリングされたモビルスーツの動きは、立体映像ではないのに、深い奥行き感を感じさせ疑似的な立体映像的にも見えるシーンがある。またドラグーンなどの遠隔操作武器を使用した攻撃のスピード感や、見ている者の周りを移動するような空間移動音も、ドルビーアトモスの立体音響だからこその臨場感が追加される。 一方、艦船同士の戦闘では、モビルスーツ戦のスピード感とは異なる重厚な音の表現がなされ、宇宙空間を背景にしているからこそのコントラストのハッキリした艦隊戦が繰り広げられる。モビルスーツや艦船による物量が画面を覆い、目まぐるしく状況が切り替わる戦闘シーンの連続となるクライマックスは、情報量が多いからこそクリアで奥行き感のある映像と臨場感の音響が映える。美しい階調のおかげで、スピード感や迫力を感じながらも描き込まれた細部まで見える映像の高精細さも見逃せない。 激戦が繰り広げられる戦場に身を置くような疑似体験をし、『FREEDOM』を楽しみ尽くしたいならば、やはり「ドルビーシネマ」こそがベストの上映環境だと言えるだろう。なお本作のドルビーシネマ版は、丸の内ピカデリーほか全国10スクリーンで上映中。ドルビーシネマが導入されている劇場が少ないのは残念であるが、ぜひともこの極上の『FREEDOM』を体感してほしい。 取材・文/石井誠