あなたは自分自身にどのように接していますか?
自分への接し方が、相手を規定する可能性
あるコーチングの中で、ネットワーク図を間に置いて対話をしていた時のことです。それまでは一つ目の視点、つまり「人」に焦点を当てて対話を進めていましたが、ある問いをきっかけに二つ目の視点に移行した体験があります。それは次の問いです。 「あなたは自分自身にどのように接していますか?」 この背景には「私たちは自分自身に接するようにしか、他者に接することはできない」という考え方があります。 普段、私たちは「自分自身をどう見ているか、どう扱っているか」について、あまり自覚的ではありません。それよりは、自分以外のことに意識を向けています。人間関係で言えば、それは「相手」のことです。相手が「どんな人であるか」ということに、意識の多くを費やしているのではないでしょうか。言ってみれば、最初の着眼点、「人」に焦点をあてたものの見方です。 先の問いを投げかけたクライアントは、 「価値があることを証明しなければ他者から認められないと思って自分と接している」 と答え、 「そうやって私は周囲の人をも位置づけようとしてように思える」 と続けました。 相手によって自分との関係が生まれているのではなく、自分への接し方を前提として、他者にもそれを適用しようとする。こう考えると、「関係が先にある」ということの理解が進みます。たとえば、自分自身に対して「至らない未熟者」として接している人は、そのような関係に他者をも位置づけようとしている可能性があります。 「自分が自分にどう接しているか?」ということに自覚的になるとは、つまり「自己認識を高める」ことに他なりません。その点でこの問いは、あなたを行動変容の入口にいざなう問いであるように思います。 あなたは自分自身にどう接しているでしょうか?
【参考資料】 ※1 グレゴリー・ベイトソン著、佐藤良明 訳、『精神の生態学へ(上)』、岩波文庫、2023年 ※2 NHK BS1スペシャル、『コロナ新時代への提言2』、2020年8月1日放映