【遺産総額6,000万円超】不動産の売却、決まらなくてよかった…「やる気ゼロ」な不動産会社のおかげで「相続税ゼロ」になったワケ
売却できなかったことが幸いし、相続税が「ゼロ円」に
小規模宅地等の特例を使うには、申告期限まで賃貸事業を継続していることが要件です。 佐藤さんの場合は要件を満たしていましたが、一方で、佐藤さんは母親亡きあとまで駐車場を維持することをわずらわしく感じており、相続発生の少し前から、不動産会社に売却先探しを依頼していました。 しかし、立地がいいのに買い手が見つからず、いまに至ります。佐藤さん曰く、不動産会社が「やる気ゼロ」で真剣に対応してくれなかったとのことでしたが、今回に限ってはそれが幸いし、申告期限まで売却せずに賃貸事業を継続したことで小規模宅地等の特例が活用でき、相続税を納付せずにすむという結果になりました。
特例を適用するには、駐車場の賃貸事業の証明が必要
小規模宅地等の特例を適用するには、相続税の申告時に駐車場の賃貸事業を行っていた証明が必要です。通常は毎年の確定申告により、その判断がつきます。佐藤さんも母親に代わって確定申告を行っていたため、その点は問題ありませんでした。 しかし、ときには今回のようなケースにおいて「確定申告をしてきませんでした」という相談者の方もいらっしゃいます。そのままでは、特例の適用ができませんが、確定申告は後から行うことが可能です。昨年と一昨年の分の確定申告をすることで、賃貸事業の継続の証明ができます。 具体的な方法としては、相続税の申告と合わせ、確定申告、準確定申告を提出する段取りを取ることになります。 今回の佐藤さんの案件は、大変慌ただしいスケジュールでしたが、佐藤さん本人の協力もあり、問題なく手続きが完了しました。佐藤さん自身も、駐車場の売却が決まらなかったことがプラスに転じたということが印象深かったようで、 「いろいろなことがグダグダでしたが、なにが幸いするかわかりませんね。今回は本当に運がよかったです」 と、しきりにおっしゃっていました。 今回はたまたまよい結果となりましたが、やはり相続対策は、緻密なシミュレーションが欠かせません。相続発生後に「あのとき、こうしておけば…」と後悔することのないよう、慎重な対応が求められます。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子