いよいよ『コナン』旋風到来、風前の灯火の『オッペンハイマー』IMAX興行
春休みの最終週となった4月第1週の動員ランキングは、順位の微動はあったものの1位から7位までのラインナップは変わらず。2位の『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』、4位の『オッペンハイマー』あたりはその期待値の高さから順当な結果と言えるが、やはりこの春のトピックはこれで初登場から4週連続1位を独走することとなった『変な家』の大ヒットと、2月公開作品ながら春休み中も主役の一角を占めることとなった『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』のロングヒットだろう。 【写真】今週末からいよいよ公開の『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』 公開4週目の『変な家』の週末3日間の成績は動員28万9000人、興収3億7100万円。公開24日間の累計成績は動員277万8000人、興収34億5900万円。公開8週目の『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の週末3日間の成績は動員14万2000人、興収2億1300万円。公開52日間の累計成績は動員648万3000人、興収92億6700万円。前者は『ゴールデンカムイ』を抜いて2024年の実写映画の興収で暫定ナンバーワンに、後者は早くも2024年初の「興収100億円超え」に王手をかけている状況だ。いずれも東宝配給作品ということで、今年も「東宝一強」の座をさらに確固たるものにしつつある。 そんな東宝配給作品の「年に1回」のフランチャイズ作品としては最大のドル箱(というか円箱)、『名探偵コナン』シリーズの最新作『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』が、今週末に公開される。昨年公開された前作『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の最終興収は138.8億円。シリーズ初の100億円超えを達成した背景には、IMAX、MX4D、4DX、Dolby Cinemaなどのラージフォーマット上映の充実、そして上映から半年を超える東宝配給作品ならではの異例のロングラン興行があったわけだが、今回も同じように万全の体制を敷いてくるだろう。 既に先週末の段階で興行的に目ぼしい初登場作品は8位の『オーメン:ザ・ファースト』だけという状況だったが(上位7作のラインナップが変わらなかったのも、多くの公開待機作が「コナン直前の時期」を避けたためだ)、現在公開中の作品は例外なくその煽りを食うことになる。中でも、3月15日に公開された『デューン 砂の惑星PART2』と、3月29日に公開されたばかりの『オッペンハイマー』のIMAX上映は壊滅的な影響を受けることとなり、『デューン 砂の惑星PART2』はほとんどのIMAXスクリーンで上映終了、『オッペンハイマー』は公開3週目にしてIMAXスクリーンでは1日1回の上映を確保するのがやっとという状況だ。 一部の映画ファンがそのことを嘆くのには理由がある。『デューン 砂の惑星PART2』も『オッペンハイマー』もハリウッド映画においても年に数本しかないIMAXカメラで撮影された作品(前者はデジタル、後者はフィルム)。通常スクリーンはともかく、せめてIMAXスクリーンだけは上映のためにIMAXのフォーマットに「変換」された作品ではなく、制作段階からIMAXで「撮影」された作品のために最低限の上映回数を維持してほしいと思うのも致し方ないこと。もっとも、近年、(まだまだ少ないが)日本でIMAXスクリーンが増設されているのは、『名探偵コナン』のような国内アニメーション作品を観るために、劇場にたくさんの観客が足を運び、IMAX撮影作品かどうかなど気にもせず、単純に大きなスクリーンと優れた音響を求めて積極的にIMAXスクリーンでも作品を楽しんでいるからでもある。いわば、IMAXでハリウッド映画を観ている観客は、そうした国内アニメーション作品のファンの恩恵を受けているわけだ。必要以上に卑屈になっても仕方ないが、そうした事実は事実として受け止めなくてはいけない。
宇野維正